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 コラム・お子さまの楽器について  つづき【楽器を購入したら】



はじめに
「子どものための弦楽器講座」では、町から楽器が無料で貸し出されました。これは、子どもたちがバイオリンという楽器に取り組む最初の困難を、かなり軽減してくれる画期的なシステムだと思います。ジュネスの団員も、そのおかげで弦楽器に触れて楽しさを学び、今日があることは間違いありません。
 しかし、平和コンサートが終わると楽器は町に返却するので、ジュネスに入団するにはご自身の楽器を用意する必要があります。もし、この「楽器を購入する必要がある」ことが、バイオリンを続けるのに壁を高くしているのなら、それを少しでも低くするお手伝いがしたい、というのがこのコラムの主旨です。管理人(ひ)の個人的な意見なので多々不備もありますが、少しでも参考になれば幸いです。


楽器は大切なパートナー、そして成長の足跡
ジュネスでも、たとえばサイズアップした後に弾かなくなった小さな楽器を貸し出す等のシステムを作れないこともありません。実際に、団員の間で個人的にそのような貸し借りをしている例や、卒業生から寄付してもらって短期的に貸し出しできる楽器もわずかながら所有しています。しかし、原則として「楽器は個人持ち」という方針を維持しているのにも、理由があります。
 まず、楽器は一緒に音楽をする大切なパートナーです。楽しく取り組むためには、借り物ではなく、大切でお気に入りの自分の楽器を持っていただきたいと思います。ここで値段は問題ではありません。どんな楽器でも、一緒に音楽を奏でれば、それは「大切なパートナー」です。
 それから、お子さまは日々成長します。成長すれば、楽器も大きめのものに買い換える必要があります。小さな楽器は弾かなくなるかもしれませんが、かつて一緒に音楽を演奏し、上達を見守ってくれた大切なパートナーだったことに何ら変わりはありません。大事に取っておいてください。お子さまの大切な成長の足跡です。


バイオリンって、いったいいくら?
もしかしたら一番の問題点でしょうか。確かに、実際のところ「1万円から数億円まで」と極端に幅があるので、いったいいくらの楽器を買えばいいのか、素人・初心者では想像すらできません。スポーツ系など他の習い事と比較すると、初期投資が大きそうで、かつ具体的な金額がイメージできなければ、相当に壁が高いと感じてしまうのも当然です。

ここで、ご批判覚悟で管理人(ひ)の個人的な回答を申し上げます。それは「安いもので構わない」です。音の良し悪しは、楽器の質ではなく、演奏者の技術の方に依存するからです。特に、始めたばかりの小さなお子さまだと、違いを感じることはむしろ困難でしょう。逆に、安い楽器でも、数年経験した子どもたちや【技術のある演奏家】が弾けば、それなりのいい音が鳴ります。正しい消費者としては、弦や弓に投資を回す方が理にかなっています。プアーな弦を張って プアーな弓を付属しておきながら「良い楽器だと上達が早い」などと言うのは、大きく矛盾していて収益を求める側の殺し文句としか思えません。正しい消費者は騙されないように気をつけましょう(※ 意見には個人差があります)。きちんと調整して弾きやすい状態を維持することは、どんな楽器にも共通して必須・不可欠なことです。【後述】
 それから、子どもたちは楽器を落とします。ぶつけます。子どもですもの、大人と同じように注意深く集中力を維持できるわけがありません。逐一目くじらを立てていたら、せっかくの楽しい音楽が台無しです。キズもヘコミも大切な思い出の一部となるでしょう。やっぱり安い楽器でよさそうです。

・量産メーカーとして代表的な「Carlo Giordano」「Stentor」「Hallstatt」などの楽器はアマゾンでも 1〜2万円で売っていますが、時に調整が不十分で弾きにくい楽器があります。できれば調整が施されたものをご購入ください。【後述】のように、少なくとも弦と松脂は、それから肩当ても、できれば弓も、付属のものではなく良いものに買い換えてください。ということで、つまりは「セット販売」の必要はないということです。
1万円以下の楽器に正しい調整が施されているとは考え難いので、いくら安くて構わないとは言っても、これ以下のグレードは避けましょう。

・かのスズキ・バイオリンは新品だと割高な印象ですが、市場では中古品が大量に流通しており、3万円程度で十分に使用に耐えうる楽器を購入できると思います。中古でも元々それなりに作られているので、奏者の技術が上がれば入門用としては十分によく鳴ります。ただし、下位グレード(No.200など)だと ペグは木材でなくプラスチック、パーフリングは線が書いているだけ、渦巻きもプラスチック製を左右から貼り付けているだけなので、あくまでも入門用です。年数が経っている中古だと、本体は大丈夫でも弓がヘタっていることがあるので注意してください。
※ 近年のスズキは中国産なのだそうです。結果的に切り捨てられてしまった国内の製造部門が独立して、下記の「恵那バイオリン」になりました。

・量産ではなく手作りの楽器でも、中国の工房製であれば【3〜5万円程度】で販売されています。やっぱり工房製の手作りは、質感がずいぶん違います。【このページのCセット】のように、それなりの弦と弓の組み合わせに交換して正しい調整が施されていれば、おそらく何も不満はないでしょう。

・材料から純国産の【恵那バイオリン】の実物を弾いたことはありませんが、実質はかつてのスズキなので、品質に間違いはなさそうです。ホームページで知りうる限り、板はプレスでニスはスプレーですが(このあたりがスズキ)、手作業で作って、ちゃんとしたテールピースと駒をつけて、それなりの弓やケースもセットした販売価格6.5万円は良心的だと思います。弦は換えてください。あと数年すると、中古品が市場に出回るかもです。 
※ ちなみに同価格帯の老舗Y社のバイオリンは、自社製造ではなく中国製を転売しているだけなので、正しい消費者はブランドに騙されてはいけません。

・ヨーロッパ産でも、特にドイツ製などで入門向けの楽器はありますが、新品だと10万円・中古でも5万円は下らないと思います。ある程度上達した後の、2本目以後にご検討されるといいでしょう。カール・ヘフナーやクラウス・へフラーなどの有名どころになるともうちょっと値が張りますが、やっぱり音も見た目もかなり上質になります。参考・【スズキとの弾き比べ】

・プロフェッショナルの演奏家は、プロフェッショナルの製作者・弦楽器職人が作った楽器を使用します。製作者は1本のバイオリンを約1年かけて丁寧に丁寧に手作りするので、まるで我が子のように感じるそうです。完成度もケタ違いです。ぜひ【この動画】をご覧ください。新作でもオールドでも、製作者や修理の技術などによって価格は少なくとも100万円以上、ご存知のストラディバリやガルネリのように数億円単位で取引されるものもあります。

というわけで、バイオリンは消費者の裾野が広く、したがって需要と供給のバランスが取れているのか、実は意外とお求めやすい価格でご購入いただける楽器です。老舗Y社の高額な管楽器と比較しても明らかに、楽器を始めるにあたって価格が障壁となることは、むしろ少ないのではないかと思います。
※ 余談ですが、さだまさし氏がバイオリンを始めたのは、楽器店にピアノを買いに行ったはずのお父さんが、20分の1の値段だったバイオリンを買ってきたことがきっかけだったそうです。

値段の話ばかりしましたが、バイオリンには値段よりももっと大切なことがあります。むしろその方を是非知っておいていただきたいので、下にいくつか述べます。


サイズ
バイオリンには、小さいお子さまでも練習できるように、小さなサイズの楽器があります。本体の容積を目安とした分数で、1/16、1/8、1/4、1/2、3/4 と呼ばれ、国内には 1/10 もあります。大人用の標準サイズは 4/4 とも表記されます。
小学校1年生だと平均的に 1/4 からになりますが、親としては子供服と同じで「長く使えるように少し大きめを」と考えるのも分かります。しかし、こと楽器に関しては、大きいと弾くのがかなりつらくなってしまうので、是非、お子さまの体格に合ったサイズのバイオリンをご購入ください。もし迷ったら、小さめの方を選んでください。特に、最初に使う楽器は、最初の上達を支えてくれる楽器なので、無理なく弾けることが何よりも第一優先です。結果的に1年後に買い換えることになったとしても、だからつまり「安いもので構わない」というわけです。サイズアップの場合も同じく、安いもので構わないので「一個飛ばし」はせずに、順番にサイズアップしてください。

サイズの選択は、身長ではなく腕の長さで決める方が理にかなっているので、【このページ】を参考にしてください ※ 経験上、少し小さめの結果が出ます。
ちなみに、サイズアップした時は、慣れるまでしばらく元の小さいサイズの弓を使っておけば比較的楽に弾けます。それから、女の子は少し早く、男の子でも中学1年生くらいになると大人用と同じフルサイズになるので、使用期間を逆算して購入価格を検討するのも有効です。→下の追記もどうぞ



先述の比較的安価なバイオリンは、販売価格を下げるために出荷状態では「掛け糸」と呼ばれるかなりチープでプアーな弦が張ってあります。この弦のままでは、全く楽器は鳴りません。これを3000〜5000円程度の弦に張り替えるだけで、かなり音質・音量が改善します。おそらく最も大きく違いを感じることができる部分なので、是非お試しください。弦には
【数多の銘柄】がありますが、下の追記 をご覧くださいませ。


先述の比較的安価なバイオリンには、販売価格を下げるために出荷状態ではかなりチープでプアーな弓が付属しています。この弓のままでは、全く楽器は鳴りません。弓も楽器です。単なる付属品ではなく、弓専門のプロフェッショナルな職人がいるくらい大事なものです。弓を持って銀線のあたりを指でポンポンとたたくと、細かい振動が手に伝わってくると思います。耳に近づければ音も聞こえます。この振動で弓はバイオリンを鳴らします。右手のボウイングはそのまま音楽の表現になるので、ということは弓に対する投資の方が、本体に対する投資と比較して、効果(音の変化)が大きいように思います。たとえば、3万円の楽器にチープな弓よりも、1万円の楽器に1万円の弓の組合せの方が良い音が出る、という具合です。心臓部である竿の部分は「フェルナンブーゴ材」が理想です。近年の木材不足で品薄・高価な印象が否めませんが、チャンスがあれば是非ご検討ください。【参考ページ】

松脂
ああ松脂。たかが松脂と侮るなかれ、馬のシッポでできた弓の毛には、松脂を塗らないと音は鳴りません。つまり、松脂には弓と楽器本体の間を結びつけて音を鳴らすという、大変重要な役割があります。ところが、先述の比較的安価なバイオリンには、販売価格を下げるために出荷状態ではかなりチープでプアーな松脂が付属しています。これを2000〜3000円程度の松脂に変えるだけで、かなり音質・音量が改善します。松脂だけは、プロの演奏家でも私たち素人とほぼ同じ製品を使用しています。しかも1個購入すると <落として割らなければ> おそらく一生使い切ることはないので、こだわってもいいオトクなアクセサリーだと思います。
 銘柄は古今東西【さまざま】ですが、日本製の【アルシェ】はたいへん評判がよく、特に「エチュード」は2000円程度と値段も手頃で入門には最適だと思います。松脂はさらさらタイプよりも粘り気がある方が理論的には音量が出ますが、特に子どもは引っかかりが強すぎると少々弾きにくくなってしまいます。管理人の長男は、3年目くらいから粘り気タイプを好むようになりました。※ちなみに Guillaume(ギオーム)という弓メーカーの松脂を使っています。


肩当て
肩当ては、安定して楽器を保持するための1つの要素なので、あご当てや構え方を含めたトータルで考える必要があります。ぜひ、この【参考ページ】をお読みください。なのでやっぱり、比較的安価なバイオリンに付属しているチープでプアーな肩当てではなく、ちゃんと楽器を保持できる肩当てを使う方がよいと思います。そして変に斜めに付けるのではなく、楽器に対して真っ直ぐ装着してください。そしてできれば、楽器を肩と顎でがっちりはさみ込むのではなく、左手と肩の2点で楽器を無理なく支える自然な構えを意識してみてください。
 銘柄は古今東西さまざまですが、「Everest」という3000円程度の製品をジュネスの子どもたちはよく使っています。カラーバリエーションもあって人気のようです。脚を折りたためる「コラプシブル」は、可動部分は雑音を生むので個人的には必要ないと考えます。
※ 注意:【参考ページ】の最後にもありますが、子どもは小さな大人ではないので、ぜひ個々のお子さまに合った肩当てをご使用くださいませ。


調整、メンテナンス
バイオリンをはじめとする弦楽器は、ほぼ全ての部品が木でできた無駄のない構成の楽器です。したがって正しく調整されていないと、音色に限らず弾きやすさにも大きく影響します。調整されていない高価な楽器よりも、よく調整された安価な楽器の方がずっと弾きやすく、そしていい音が鳴ります。
 したがって、消費者としてはこの「調整」の部分にコストを支払うことを優先させるべきです。楽器の値段が調整の部分を含んでいればよいのですが(つまり、高価な楽器=よく調整されている)、多くの楽器は量産なので、1つ1つの楽器に細かな調整が施されていないのは仕方のない事実です。購入した後も、きちんと調整して弾きやすい状態を維持することは、どのような楽器にも共通して必須・不可欠なことです。
【参考ページ】に、調整について簡単な解説があります。このサイトで販売されている楽器は【オリジナル】 だけではなく全ての商品で「調整料込」と明記されています。同じStentor製やCarlo Giordano製の楽器でも、仕入れたものをそのまま販売するのではなく、独自の調整を施しているという意味で安心できそうです。※ 近年はオリジナル以外は調整していないようです

それから、もし中古の楽器を購入する場合に注意すべきは、「程度の良い」というのは「よく調整されていること」を尺度に判断する必要があるということです。仕舞い込まれていて新品のまま長年弾かれていない、という物件は一見良さそうに見えますが、調整という意味ではむしろマイナスポイントです。バイオリンは、よく弾かれてよく手入れされるほど長持ちする寿命が長い楽器で、世代を超えて使うこともできるくらいです。古い新しいはあまり問題ではありません。

しかし、さて困りました。調整って、いったいどこへ持って行けばいいのでしょうか? おそらく長崎の楽器店は独自では調整せずに(できずに)、福岡か名古屋に外注すると思います。したがってコストは跳ね上がり、結果的にいくらになるのか管理人も想像がつきません。ごく簡単な点検や調整であれば、管理人でもわずかながら心得があるので遠慮なくご質問ください。しかし、実は、もっと良い方法が1つだけあります。


Maestro Liutaio
かのストラディバリやガルネリ一族を輩出したイタリアのクレモナ在住で、かのクレモナでも指折りの弦楽器製作者・石井高先生が、なんと毎年1か月だけ長崎歴史文化博物館の中に工房を構えて、楽器の調整をしてくださいます。こんなに幸運 & 幸福なことは、おそらく滅多にありません。驚くべきことに & 有難いことに、石井先生はどんな楽器でも調整してくださいます。2014年は9月1日から1か月間長崎に滞在される予定です。詳しいことは管理人にお問い合わせください。
※ 誠に残念ながら、石井先生は2015年9月にクレモナにて永眠されました 【石井先生の思い出】


おわりに
もし「楽器を購入する」ことに抵抗があったとしたなら、このコラムを読んでその抵抗が少しでも和らいでいることを期待します。もう一つ、ほんの少しの勇気さえあれば「案ずるより産むが易し」です。安価なもので構いませんので、思い切って1台ご購入ください。そして、その大切なパートナーと目いっぱい一緒に音楽を楽しんでください。1年後か2年後か、お子さまが成長して次のサイズの楽器が必要になる頃には、もっとバイオリンのことが好きになって、「手作りの楽器がいい」とか「裏板のシマシマ模様がカッコイイやつがいい」とか、いろいろと楽器のことが分かるようになっているはずです。もちろん右手のボウイングや音楽そのものも豊かになっていることでしょう。その時に、少し高価で良質な楽器をご購入されるといいかと思います。でも、小さな楽器は かつて一緒に音楽を奏で、上達を見守ってくれた大切なパートナーだったことに何ら変わりはありません。大事に取っておいてください。お子さまの大切な成長の足跡です。ー ページ管理人(ひ)



追記・弦について
バイオリンの弦には、比較的安価な「スチール弦」と上級者用の「ガット弦」があります。それぞれスチール(金属)とガット(羊の腸、テニスラケットをイメージしてください)の芯に、どちらもアルミが巻かれています。この2つの中間的な位置に、合成繊維(ナイロン)の芯にアルミ巻きの「ナイロン弦」があります。価格や品質のバランス、調弦の安定性などの理由から、プロ・アマ問わず広く一般に使用されています。
 ナイロン弦の元祖ともいうべき銘柄が「Dominant」です。元祖だけあって非常に根強い人気があり、プロの演奏家でも使用している例を度々見かけます。根元部分の色が特徴的なのですぐに分かります。この「Dominant」を作っている会社が新世代のナイロン弦として開発したものが「Vision」です。「Vision」の方が安価ですが、新しい製品だけにたいへん評判よく、分数楽器用だと価格もお手頃なので是非お試しください。
 それから、掛け糸を換えた後の2回目以後は、必ずしも4本まとめて弦の交換をする必要はありません。細い方の弦ほど劣化が早く、太い方の弦ほど高価なので、E線と同じペースでG線を張り替えるのはあまり論理的ではなく、同時に少々もったいないです。特にE線はどの銘柄でも巻きなしのスチール弦で早く劣化しますが、と同時にE線は非常に安価なので(数百円)、いろいろ張り替えて音色の違いを感じてみるのも楽しいと思います。



追記・女の子の3/4は一瞬?!
ジュネスの子どもたちを見ていると、女の子が3/4サイズの楽器を使う期間がとても短く、すぐにフルサイズへサイズアップする例が多いことに気が付きました。成長曲線のグラフを見ながら、少し検証してみましょう。
 ポイントは、平均身長ではなく一定期間での成長量を示す「成長率(成長速度)」に着目することです。3/4サイズに適した身長の【目安】は 135〜144cm ですが、女の子のこの期間は、成長率が急上昇している期間とピッタリ一致します。したがって「女の子の3/4は一瞬」という仮説は、あながち偽ではないと言えそうです。本格的なフルサイズの購入に備え、3/4はお値打ち価格に抑えて予算をセーブしておくのも、理にかなっていて悪くないと思います。

#腕の長さはデータがないので身長のみを評価した、しかも平均値のお話です。平均値はクセモノです。10歳までの身長に男女差がほとんどない下のグラフもやや疑問です。お子さまの体格に適したバイオリンの購入をご検討ください。
#後に知ったのですが、一般的にも「1/2は比較的使う期間が長い、3/4は短い・特に女の子」というのは正しいそうです。

“成長率”





 コラムの続き・楽器を購入したら



さて、お父さんお母さんが、新しい楽器を買ってくださいました。おめでとうございます!。もう今日から、その楽器は大切なパートナーです。それどころか、音楽を演奏する時は身体の一部になります。大事に大事にあつかってください。
楽器を良い状態に維持するために、最低限知っておかなければならない知識があります。以下に述べることが全てではないけれど、少しずつ一緒に学んでいきましょう。


バイオリンの解剖学
まずは、図を見て各部の名称を覚えましょう。あえて英語の名称を載せているのは、より深く理解するためです。英語名そのままのものも多いし、日本語訳も書いていますので、ご両親と一緒に勉強してみてください!

“anatomy”

取り外すことができる部品の ペグ・テイルピース・あご当て・エンドボタンは、総称して「フィッティング」と呼ばれています。色の違いは、黒は黒檀(Ebony)、濃い茶色は紫檀(Rosewood)、薄い茶色は柘植(Boxwood)という木材の違いで、機能的には大差ないそうです。一般に1本の楽器には同じ素材のものが使われていますが、お好みに応じて付け換えることも可能です。ちなみに、管理人(ひ)は黒の黒檀が好きです。後に購入したビオラには紫檀のフィッティングが付いていましたが、紫檀も渋くてなかなかよいです。

バイオリン本体の素材としては、表板は柔らかいもみの木(Spruce)、裏板・横板・ネックは固い楓(Maple)、指板はもっと固い黒檀(Ebony)が使われています。弓で擦った弦の振動は、弦→駒→表板→魂柱→裏板と伝わって楽器が響くので、駒や魂柱が表板・裏板と接する部分はピッタリ合うように調整されている必要があります。

表面に塗られているニス(varnish)は、見た目を美しくするのに加えて本体を保護する役割があります。ちなみに varnish→ワニス→ニス と変化したのがニスの語源で、英語で「Sprit varnish」と書いてあれば、日本語だと「アルコールニス」の意味になります。ニスの色による機能的な違いはないそうなので、お好みの色をお選びください。

← これが Spruce の木です。ドイツ語名「Fichte フィヒテ」は無理矢理日本語に訳すと「ドイツトウヒ」で、おそらく日本には自生していないと思います。写真は横浜のズーラシア動物園に植えられていたものです。木をたたくとバイオリンと同じ細かい振動を感じることができ(るような気がし)ます。それにしても「トウヒ」は漢字で書くと「唐檜」、つまりドイツの中国のヒノキとはコレ如何に?!
柾目で表板材を加工するには、少なくとも半径がバイオリンの半分の幅よりも、つまり直径がバイオリンの横幅よりも大きい必要があるので、これくらいの大きさだとまだまだ若木です。北側斜面で成長が遅く、さらに同じ1本の木でも北側を向いた半分の、つまり年輪が詰まっている木材ほど良いそうです。
楽器を弾く前に
・弓の毛をほどよく張ります。あまり張りすぎないよう注意してください。張り具合の理想は「弓の振動を最も効率よく本体に伝えられる張力」ですが、竿と弓毛の間の一番狭いところが、竿の太さと同じくらいになるのが一つの目安です。冬場は乾燥して、特に暖房を入れると毛が縮んで次第に竿と弓毛の間が広くなる(張り過ぎてしまう)ので、演奏しながら気をつけて調節してください。
・弓の毛には松脂(Rosin)を塗ります。弾いた時に弓毛からフワッと粉が舞えば多すぎで、弦にべっちょり松脂が付着してしまうので注意してください。逆に少なすぎると、弓毛が弦の上を滑って上手く楽器が鳴りませんので、適量を見極めましょう。

・楽器を弾くには、毎回正しくチューニング(調弦)しなくてはなりません。調弦のために、チューナー(クロマチックチューナー)があると便利です。というか必須です。iPhoneのAppでも同様のものがありますが、管理人が中学生だった頃には何万円もする憧れの高級品だったものが、現在ではアマゾンで1382円で売っています。よい時代になったものです。ぜひご購入ください。お好みで、メトロノーム機能付きなどの選択肢があります。
・自宅ではチューナーだけで十分ですが、ジュネスだと周囲が騒々しいので、チューナーに加えて「コンタクトマイク」があると重宝します。というか必須です。数年で壊れる(機能しなくなる)こともしばしばなので、消耗品と考えて800円程度の安いもので構いませんのでぜひご購入ください。
・ギター用などとして販売されているクリップ式も、コンパクトでなかなかよいです。管理人(ひ)は、このクリップ式をケースに入れて持ち運んでいます。うず巻きか糸倉のあたりに装着するので、奏者から見えるように首の角度を変えられるタイプを選びましょう。442Hzに調節するのも忘れずに。※ そして後日、楽器の肩の部分に装着する ダダリオ社の【この製品】に行き着きました。
・音は、目で見て合わせるのではなく、耳で聴いて合わせるものです。慣れてきたら、ぜひチューナーに頼らず音叉で調弦してみてください。少し上級編ですが、Aの音を442Hzの音叉で聴いて合わせ、1本ずつ隣の弦と一緒に音を鳴らして、うなりがなく心地よい響きの和音になるように合わせていきます。※いわゆる純正5度調弦
・調弦は、テイルピースのアジャスターを回すと簡単にできます。弦は張っていると次第に伸びる(音が低くなる)ので、アジャスターは音を高くする方へ回すことになります。だんだんアジャスターだけでは調弦できなくなるので、時々はペグも回してください。その時、アジャスターは低い方へ戻して、ペグでは弦を張る方へ回して調節します。

ペグでの調弦について
・弦の張力は相当に強いので、ペグとペグ穴の間の摩擦が十分でないと、弦が緩んでしまいます。なので、ペグをグイッと押し込みながら回します。逆に固すぎて回らないこともあるかもしれません。ペグはほどよく回り、ほどよく止まるように調整されている必要があります。そのためのコンパウンドが市販されています。代表的なヒル社のものが1本約1000円、一度買うと一生使い切ることはまずないので、ぜひ購入してご活用ください。
・バイオリンのペグは、ギアがなく比1:1の構造なので、わずかに動かしただけでかなり音程が変わってしまいます。少し低い・少し高いからといって、ペグを少し回して合わせることは極めて困難、ほぼ不可能です。
・そこで管理人は、ペグをある程度緩めてまた張って、偶然ピッタリ合うまで何度も繰り返す「数打ちゃ当たる」の原理で調弦しています。それですなわち調弦できているからです。恥ずかしながら、先生に教わったわけではなく全くの我流なので、良い子はあまり真似しない方がいいかもしれません。少しだけ高い場合、弦の真ん中(ナットと駒の中間)をグイッと引っ張って、つまり弦を少し緩めて低くする方法もあります。
・もちろんアジャスターで微調整してもいいです。その方が簡単だし現実的です。ただ、大人用(フルサイズ)のバイオリンはスチール弦のE線にしかアジャスターが付いていないのが標準なので、ペグでの調弦にも少しずつ慣れておいてください。

・ペグで調弦するときは、うず巻きを掴んでペグをグイッと押し込みながら回して調弦します。なので、ペグが楽器の水平方向と垂直に近い角度になっていないと、細かい調弦が困難です。しかしペグがちょうどよい位置で止まるどうかは偶然なので、ペグの穴から出す弦の長さで調整する必要があります。管理人(ひ)は、この調整がすぐできるように、ペグ自体に弦を巻くのは1巻きか2巻きで、残りはピロンと糸倉の外へ出しています。このような状態で楽器店に陳列されていると誰も購入してくれませんが、調整しやすいのはもちろん、ペグに余計な圧がかからず弦が素直に振動して、その結果楽器もよく鳴るそうです。※プロの演奏家から教わった奥義で、この【記事】が知りうる限りで最も近い記述です。
・注意すべき点として、ペグとアジャスターは引っ張る方向が逆なので、時に駒が歪んだり傾いたりすることがあります。駒は厚みが一定ではなく、表板に接する方が厚く、弦を乗せる方が薄くなっています。したがって、横から見ると駒は細長い三角形のように見えますが、テイルピース側の面が表板と直角になるように調整するのが標準です。その時に駒は、正しい位置(左右的に正中・前後的にはf字孔の内側の切り込みの位置)で表板に隙間なくピッタリ接している必要があります。※ 駒を合わせるのは弦楽器職人レベルの調整ですが、合っているかどうは管理人に時々見せてもらえば点検します。



楽器を弾き終わったら
・弓は、弓毛を緩めてケースに収納してください。竿に力がかかっていなければいいです。ダランダランに緩める必要はありません。
・弦についた松脂を、必ず拭き取ってからケースに収納しましょう。これで弦の寿命がかなり延びます。弦を拭くタオルは、本体にその松脂が移らないよう、弦専用にしてください。10枚入り300円のガーゼのような、一番安いモノでいいです。時々、普通に洗濯して交換してください。さらに、弦にこびりついた松脂を時々アルコールで拭き取ると、弦はもっと長持ちするそうです。※アルコールが本体のニスに付いてはいけません。
・できれば弦を拭くのとは別のタオルで、本体を拭いてください。特に、駒の周辺や指板の下など弾く部分の弦の直下は松脂が舞って付着しているので、ニスにこびりつかないように毎回丁寧に拭きましょう。ちなみに管理人(ひ)は、この部分はちょっと奮発してキョンセームという鹿皮で本体を拭いています。弦の直下部分に限らず、ネックやあご当てやエンドボタン周辺など、手や首が触るところもよく拭きましょう。
・楽器をケースに収納したら、必ず楽器の上に「ブランケット」という布をかぶせて、フタを閉めてください。ケースは手に持ったり肩や背中に担いだりして運びます。車に載せることもあるでしょう。実はケースの中も意外と揺れています。楽器が揺れて、弓や弓を留めるネジに当たって楽器が傷ついてしまうこともあります。ブランケットは、それを防ぐためのものです。もう一つ、例えば楽器を出して机の上に置く時などに、ブランケットを下に敷いてその上に楽器を置くと便利です。ご活用ください。


弦を張り替える時に使用しているグッズです。
まず、下に 作業用の布 を敷きます。ケースの中のブランケットを使用してもよいです。
弦は1本ずつ交換します。古い弦を外した後、ペグが糸倉の穴と接する部分にヒル社製の コンパウンド(後列左)を塗ります。場合によって、緩くしたい時は 石けん・固くしたいときは ペグオイル(後列右)を組み合わせて調節します。
上ナットの溝を 6Bの鉛筆 で少しだけ塗って、新しい弦を張ります。ペグの穴に通した弦の先端を 鉗子 でつかんで引っ張り、調弦した時にペグがちょうどよい位置で止まるように調整します。
最後に、駒が指板寄りに傾いてないか、定規 を使って直角を確認して終了です。
右端の アルコール は、弦の交換には使いませんが、弦にこびりついた松脂を拭き取るために使います。
さあ練習!
上達のために必要なのは、何よりも練習です。イヤイヤ練習しても、上手くなるハズがありません。練習と意気込まずに、楽しく演奏しましょう。たくさん弾くこと、それがすなわち練習です。
・バイオリンは無段階の音程が出る構造の楽器なので、精確な音程を取れるようになることが上達の第一歩です。管理人(ひ)も、何年経ってもいまだ安定しない音程に悩んでいます。遠回りで退屈に思うかもしれませんが、基本の音階練習を繰り返すことがとても大切です。バイオリンをケースから出したら、まず最初に音階練習をするクセをつけておくといいでしょう。この時ついでに、右手もロングトーンを弾いてウォーミングアップしてください。※後述
・この時、いつもは調弦に使うチューナーが非常に役に立ちます。音階練習で音程が合っているかどうか確かめることができるので、管理人はチューナーのことを「チューナー先生」と呼んでいます。
・ただし、あまりチューナーだけに頼って指の位置を合わせようとするのはいけません。音は、目で見て合わせるのではなく、耳で聴いて合わせます。音が楽器全体でよく響くところを探せば、おのずと音程がよく合うはずです。たとえば、3の指を押さえると、1本低い弦がちょうど1オクターブ下になって一緒に響きます(共鳴します)。1の指を押さえると、2本高い弦がちょうど1オクターブ上になって一緒に響きます。オクターブだけでなく、音程が合えばお互いの弦が楽器と気持ちよく響き合うような構造になっています。逆に音程が合っていなければ、周波数の差による「うなり」が生じて気持ちよく感じなくなります。
・この点、ジュネスの合奏だとみんなと一緒に演奏するので、自分の音が全員の音に溶け込むように意識して練習すれば、自然と正しい音程が取れるようになると思います。これはチャンスです。ぜひがんばってください!

バイオリンの練習では、ついつい左手の音程(つまり楽譜の縦軸)ばかりを意識してしまうけれど・・・
・楽譜の横軸(音の長さ=リズム・テンポ)も音楽には同じように大切な要素です。もちろんメトロノームが練習の助けになりますので、ぜひ一つご用意ください。
・右手のボウイングを「ついでに」ウォーミングアップしてください、とは先述しましたが、右手の役割はピアノやフォルテの強弱のみならず、アタックやドルチェ、そのための弓先・弓元など弾く位置の使い分けなど、そのまま音楽の表現につながるとても重要な要素です。何より弓で弦を捉える感覚が、きれいな音の響きを引き出す源となります。(ひ)個人的には、右手で弓を持つということは、関節が一つ増えて腕が延長したのと同じことだと解釈しています。ただロングトーンを弾くのではなく、弓を含めた身体全体に意識をはらってよい響きが出せるよう、繰り返し練習してください。※後述

※ついでに楽譜を読むヒント!
管理(ひ)もピアノは弾けないし、楽譜も上手く読めません。しかしある日、ある法則に気が付きました。それは、
・五線譜の線の上にある音符は、奇数の指(1の指、3の指)で押さえる
・五線譜の線と線の間にある音符は、偶数の指(開放弦、2の指、4の指)で押さえる
という法則です。以後、「ドレミファソラ・・」と音符を追うのではなく、音符の位置と指の位置が連動するように意識したら、楽譜に対する苦手意識がちょっぴり少なくなりました。第3ポジションもこれで行けます。不思議とどの教本にも書いていない自己流の裏技?ですが、管理人はバイオリンもハ音記号のビオラもこれで弾いています。
※ 偶数の第2・第4・第6ポジションには当てはまりませんが、これらは上級編です。

後日談:この原稿を書いてから数年後、上記の音符の位置と指の位置を連動させようとする TAB譜的な読み方を意図的に捨てて、ちゃんと音符を音で捉える楽譜の読み方に努めるようになりました。でないとやっぱり、音符の向こう側の本当の音楽をイメージできないからです。管理人(ひ)も、少しは成長できたのでしょうか? また、ビオラという楽器の特性上、偶数ポジションにも積極的に挑戦しています。


管理人(ひ)の練習グッズです。左から、
メトロノーム:ドイツのWittner社製の小型、カツカツといい音が鳴ります。実際は、音量や音色をお好みに設定できるデジタル式の方を、便利なので愛用しています。
チューナー:元祖チューナー先生(自宅用)。楽器のケースにはクリップ式を入れています。
音叉とマレット:音叉(Wittner社製の442Hz)は精密機器です。机の角にコツンとぶつけるのではなく、半分から下をマレットで優しくたたきましょう。そのまま根元を耳の穴に入れるとよく聞こえます。ちなみに写真のマレットは子どものオモチャだったものを流用しました。
ワインのコルク:弓毛の松脂をならしたり、指のストレッチをしたり、立派な練習グッズです。
ハンドグリップ:左手3の指・4の指の筋トレ用に、手がすぐ届く位置に置いています。100均で最も力が弱いタイプ。
卓上用譜面台:脚部が壊れた譜面台を卓上用に加工したものが、一部写っています。
ポケットスコア:オーケストラで交響曲を演奏するには、スコアを読んで音楽の全体を理解するのも大事な練習です。
MuseScore:楽譜作成のソフトウェア(なんと無料!)。音符をベタ打ちすれば自動演奏機能を利用して音やリズムを取れるので、ほぼ先生状態でフル活用しています。
ついでに管理人(ひ)の自室です。下記に限らずたくさん練習グッズが置いてあるのですが、あなたはいくつ見つけられるでしょうか?
据え置きタイプ譜面台:出し入れしなくていいのと、安定しているのがとてもいいです。マグネットで鉛筆などをくっつけて、支柱には弓もかけられるようにしています。
バイオリンスタンド:K&Mというドイツの会社の製品です。もちろんビオラも置けます。写っていませんが、壁にも楽器を掛けられるフックを複数設置しています。
ピアノ椅子:長らく立って練習していましたが(基本)、疲れるのとオーケストラでは座って弾くので、練習用に購入しました。結果、よく練習するようになりました。
電子ピアノ:音を取るために購入しましたが、MuseScore の方に頼ってしまっています。88鍵にこだわらなければ安価でした。いつかピアノも弾けるようになりたいなぁ。
寄木細工の小物入れ:松脂や 弦を拭くガーゼ、本体を拭くセーム皮、その他もろもろ使用頻度が高い小物がすぐ取り出せるように収納しています。
A音とD音の音板:子どものオモチャから抜き出しました。驚くべきことに 442Hzで音程がピッタリ合っているので、音叉代わりに重宝しています。
反射ガラス:鏡を置く代わりに、窓に反射フィルムを貼りました。姿勢や弓の動きをチェックできます。
防湿庫:本来はカメラ用ですが、ツマミを最弱にすると50%台の湿度をキープしてくれるので、楽器の収納庫としてもちょうどよいので中に吊しています。楽器が日焼けしてしまわないように、ガラス扉をスモークのフィルムとカーテンの生地で遮光し、内側には弓をかけられるよう加工しました。
ケースと置き台:置き台の引き出しの中には、ビデオカメラやボイスレコーダーなどの機材が入っています。iPhoneではなく、やっぱり専用の機材を使いたいです。
オーディオ:大したシステムではありませんが、音楽は良い音で聴きたいものです。アナログのレコード盤も聴けます。電子ビアノのためのスピーカーはウーハーを兼用しています。
バイオリン 心・技・体
バイオリンの練習といえば、ついつい技術的な部分ばかりを意識してしまうけれど・・・
バイオリンの演奏も、他のスポーツや書道・茶道・華道などと同様に、「心・技・体」の全てが大切な要素です。
 構え方や肩甲骨まで含めた左右の腕部分に限らず、頭・首・体幹・腰・足の位置・角度や重心のかけ方、さらに呼吸や視線も含めて、バイオリンを演奏するには身体全体に意識を払う必要があります。一方、ハイフェッツもグリュミオーもミルシュタインもメニューインもスターンもオイストラフもビオラのプリムローズも、歴代の大家と呼ばれる演奏家は、総じて実にラクラクと力を抜いて演奏しているように見えますが、楽器からは美しく澄んだ・温かく太い音が響いています。それからオーケストラで演奏している弦楽器奏者の面々は、音楽に合わせて気持ちよさそうに、また時に激しく身体を動かしながら演奏しています。彼らの身体の動きは間違いなく無意識で、決して振付のように決められた動きではないはずです。その結果として、ほれぼれするほど美しい立ち姿・弾き姿に見えるのでしょう。
 想像するにおそらく、身体全体に意識を払うことが無意識にできて、身体と楽器がほぼ一体化することが、真に良い演奏に必要なのだと思います。「技」と「体」は切り離せないということです。ついでに、バイオリンを弾くときだけ姿勢よく、なんて都合のよいことは不可ですから、普段の日常生活から姿勢のよい状態を保つよう心がけておいてください。※ 管理人(ひ)もがんばっています!。姿勢と言っても静的なものに限らず、動きを伴う姿勢、つまり「所作」、英語で言えば「posture」も意識しましょう。
 加えて、音楽が好きな気持ち、きれいな音で弾きたいという向上心、平和を願う気持ち、一緒に演奏する友達を思いやる気持ち、先生方や両親への感謝と尊敬など、「心」を抜きにすることは考えられません。プロの世界でも、演奏家にしろ指揮者にしろ、人格的な部分が少なからず音に表れているように感じます。
 まだ小さな子どもたちを相手に「心・技・体」を要求するのは困難かもしれませんが、少しずつでも分かるようになれば、それがすなわち子どもの成長なのだと思います。

※余談ですが、管理人の長男はバイオリンを始める約1年前からピアノも習っていました。この「ピアノ+バイオリン」という組合せが良かったのか、いつの間にか絶対音感を身につけ、聴いたメロディをピアノでもバイオリンでもそのまま弾くことができるようになりました。ピアノだと適当に伴奏も付けながら自在に演奏する長男を見て、羨ましいを通り越えて悔しささえ覚えてしまいます。このような技術的な部分のみならず、ジュネスでは先生方や友達と一緒に音楽を創造する過程の中で、心・技・体の「得がたいもの」をたくさん得ることができたように思います。父親として感謝しかありません。



最後に・保護者について
それから、バイオリンの練習には、やっぱり保護者の協力が不可欠です。間違いなく、特に始めて間もない頃は、親子そろって一緒に取り組んだ方が、一人でやる場合よりもずっと早く上達します。 朝ドラ「カムカムエヴリバディ」でも、ラジオのさださんがおっしゃっていました
【声】。 指導者に任せっぱなしにするのではなく、一緒に指導を聞いて理解することが、小さな子どもに指導者の意図を継続して伝えるためにも必須です。ただし、イヤになってしまわないように、あまりお子さまを叱らないようにお願いします。調子が悪ければ、また明日練習してください。
 子ども用の楽器は小さいけれど、大人でも弾くことができます。少々極端な例ですが、こんな【動画】や こんな【動画】もあるくらいです。お父さま・お母さまも、ぜひお子さまと一緒にバイオリンに取り組んでみてください。少しでも弾けるようになったら、大人用のフルサイズを1本ご購入ください。いずれ必ずお子さまも弾くことになるので、決して無駄な投資ではありません。

そんなこと言われても、「私、バイオリンなんて無理無理!」と思われるかもしれません。確かに、上記の「身体全体に意識を払う動きが無意識にできる」までには長い時間を要するので、バイオリンは「子どものころから練習しておく」必要があります。しかし、大人にだって大人ならではのメリットがないわけではありません。それは、知識と経験によって鍛え上げた「頭脳(ブレイン)」です。子どもなら時間がかかる技術の習得も、我らがブレインをもってロジカルに効率化すれば、何分の一かの時間で済むはずです。この仮説が正しいかどうかはさて置いて、数少ない武器は存分に活かしたいものです。ぜひバイオリンの練習に取り組んでみてください。壁は決して高くありません。実際に、お子さまと一緒にステージに立って演奏している仲間もたくさんいます。(ひ)にとっての西川先生や石井先生、恩師の岩永先生のように、尊敬する人物との出会いも待っているでしょう。そしてある程度弾けるようになったら、Nakaojoでお待ちしていますので、ぜひ一緒に演奏しませんか?
 ちなみに管理人(ひ)は 40歳を迎えた頃にバイオリンを始めて、以来累積すると結構なエネルギーを費やしましたが、上達の速い子どもたちに抜かれまくって悔しい、しかし羨ましい&嬉しい複雑な気持ちをいつも感じています。それはそれでいいものです。

* 「アンサンブル Nakaojo」では、指導者の先生方や卒業したOB/OG、管理人と同じように子どもと一緒にバイオリンを始めた保護者が集まって、弦楽アンサンブルを楽しんでいます。腕前の方は置いといて、成長した子どもたちと一緒に音楽を演奏できるのは何事にも代え難い悦びです。※「Nakaojo」の名付け親は西川先生です。



References(参考ページ)
最後に、楽器の調整やメンテナンスについて学ぶために、ぜひともプロフェッショナルが書いているホームページをご一読ください。参考になることがたくさん書いてあります。

【佐々木バイオリン製作工房】〜 管理人の知りうる限り、最も充実していて最も論理的です。205も項目がありますが、「マイスターのQ&A」を一通り読むと、あなたもぐっとバイオリンのことに詳しくなっているはずです。※佐々木氏の著書「弦楽器のしくみとメンテナンス・マイスターのQ&A」は、もちろん管理人が2冊とも所有していますので、いつでも貸し出しが可です。

【バイオリンパレット】〜 上記でも度々引用している本来は販売目的のホームページですが、「初心者コラム」の解説が分かりやすくてとても充実しています。商品を購入した場合の対応も、とても丁寧ですのでぜひご活用ください。ちなみに管理人はいつもここから弦を購入しています。

【職人・石井 高】〜 嗚呼、石井先生。石井先生を失ったのは返す返すも残念ですが、ホームページに技術の一端と先生のお人柄が少しだけ遺されています。さだまさしさんとも親交があったそうです。映画「耳をすませば」の台詞に登場する「クレモナの親方」は、おそらく石井先生です。※2019年、残念ながら閲覧できない状態となりました。【石井先生の思い出】


また、演奏の技術的な面については、動画を含む解説ページがたいへん参考になります。

【山本英二】〜 バイオリンの先生が動画をたくさんアップロードされていて、レッスンのポイントなどを分かりやすく解説してくださっています。特に、篠崎の教本全曲演奏と解説は圧巻です。実は管理人(ひ)のイチオシです。

【バイオリンがわかる!】〜 こちらもバイオリンの先生が書かれたホームページで、バイオリンの演奏や調整、おすすめのCD・DVDなど、かなり幅広い内容がとても充実しています。私たちも弾くような入門曲でも、この先生が弾くと音が響きまくっていて驚きます。ぜひ演奏の動画【violinwakaru】をご覧ください。

【バイオリン上達.com】〜 まだお若い方が解説動画を多く掲載されています。技術的な解説が分かりやすく、とても参考になります。時々合成でピアノを弾いてらっしゃるのですが、なぜか爆笑してしまいます。

同じようなバイオリン演奏の解説動画は国内外で多くありますが、お好みによって好き・嫌いもあると思います。管理人は知る限りの中で 、上記に加えて【Doree Huneven】 がお気に入りです。※近年はタイ語の動画が多いですが、下の方を見てください。英語の動画でも視覚で十分に理解できます。みなさまもお気に入りを探してみてください。

# なるべく無駄のない文章となるよう努力しましたが、長文に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

# ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。ものはついでに、【学ぼうクラシック!】を ぜひお楽しみくださいませ。

ページ管理人(ひ)





Jeunesse String Ensemble of Nagayo
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