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 隠しコラム・学ぼうクラシック!



【はじめに】
クラシックって、どんなイメージですか? 難解? 高尚? 退屈? 長い? 眠い? 敷居が高い? チケットが高い? 癒しの音楽?
まず、そのような先入観を全て捨てて、心の中を真っ白にしてみましょう。そして、あ、クラシック音楽が流れてきました。あなたは何を感じますか? 管理人(ひ)は、興奮を感じます。青春時代に忌野清志郎やフレディ・マーキュリーの歌声に感じたのと全く同じ興奮です。そう、古来から人類のすぐ近くに存在し、聴く者の心を揺さぶる純粋な芸術、それが「音楽」です。クラシックもジャズもロックも童謡だって同じ音楽ですから、少々個人の好みが分かれる程度の違いしかないはずです。(ひ)はクラシックが大好きですが、その中での好き嫌いもけっこうあります。それでいいのです。
 確かに、クラシックは奥が深いです。作曲家は多数、曲はもっと多数、指揮者やオーケストラによる演奏の違いまで入れるとほぼ無限、AIでもなければ一人が全てを理解することは不可です。でもそれは歴史が長いので当たり前、だからこそ「知れば知るほど面白い」対象となりうるのだと思います。多く知ろうと欲張らずに、作曲家でも曲でも指揮者でも演奏家でも、聴いた時に「!」と直感したら、そこから攻めて掘り下げてみてください。これを繰り返して積み重ねれば、おのずと理解が深まるでしょう。

このコラムは、まずはクラシックを知るための基礎知識的なことを簡単にご紹介できればと思います。なるべくウンチクにはならないように心がけますが、対象が対象だけにやむを得ず内容が多くなってしまうのは前もってご了承くださいませ。
それではみなさま、一緒にクラシック音楽の世界を覗いてみましょう。


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【演奏者の人数:1人から100人超えまで、曲の構成「ソナタ形式」など
オーケストラで盛大に演奏されるシンフォニー(交響曲)ばかりがクラシックとは限りません。むしろ管理人(ひ)は、小さな編成で演奏される【 室内楽 Chamber music 】が大好きです。「室内」とは「屋内」ではなく「宮廷」という意味で、レコードやテープレコーダーなどが無かった時代に、王族・貴族の住む宮殿や宮廷の中でお抱えの音楽家が生演奏していたことからその名で呼ばれています。※ちなみに対極は「教会音楽」で、音程や音律なども違っていたそうです。
室内楽は1つのパートを1人の奏者が演奏するのが基本形で、人数が少ない方から順に、
 ・無伴奏 Unaccompanied: ソロ楽器1名のみ
 ・ソナタ Sonata: ソロ楽器 + ピアノ(ピアノソナタの場合は単独)
 ・ピアノトリオ Piano Trio: バイオリン + チェロ + ピアノ
 ・弦楽四重奏 String Quartet: 第1バイオリン + 第2バイオリン + ビオラ + チェロ
などが代表的です。歌手 + ピアノの組合せで歌われる【 歌曲 Leid, Air 】も、室内楽に含まれると言えるでしょう。

某テレビドラマで注目された弦楽四重奏はクラシックの基本とも言える演奏スタイルで、多くの作曲家が数多くのレパートリーを残しています。(ひ)も大好きで、自身が一員となってカルテットを演奏するのが秘かな夢 secret desire でもあります。シューベルトの<弦楽5重奏>、ブラームスの<弦楽6重奏>、メンデルスゾーンの<弦楽8重奏>など、少しずつパートが増えたレパートリーも名曲が多数です。弦楽器 strings に限らず、管楽器 winds のための室内楽も多くあります。そしてそれは文字通り透明な風が吹くように爽やかで、(ひ)も大好きです。

 それから、「ソナタ」というのは演奏する人数を表す語ではなく、「主題の提示(複数)、展開部、再現部」という曲の構成を表すものです。第1楽章がこの「ソナタ形式」で書かれ、続いて緩徐で叙情的な第2楽章、第3楽章は3拍子のメヌエットやスケルツォ、ラストの第4楽章は高速でリズミカルに大団円、というのが基本的なパッケージになります。室内楽に限らず、後述の協奏曲も交響曲もこの形式で書かれています。実質4曲分と確かに演奏は複雑で長くなりますが、それだけに聴き応えはたっぷり特盛になります。演奏者の集中力を保つために、演奏会では全ての楽章が終わるまで拍手はしないのが慣例です。ごくまれに聴衆全体が極めて感動した場合など、思わず楽章の後に拍手が漏れ出てしまうことがありますが、そういう時の指揮者や演奏者はとても嬉しそうに見えます。かのブラームスの交響曲第4番の初演では、楽章が終わる度に作曲者に対する拍手が鳴り止まなかったそうです。でも本当に「ごくまれ」なので、観客としては最後まで拍手はしない方が無難だと思います。
 豆知識ですが、シューベルトの<交響曲第7番>が「未完成」と呼ばれているのは、2楽章で終わっていて第3・第4楽章が存在しないからです。一説によると、シューベルトが第1・第2楽章ともに3拍子で書いてしまったために、本来3拍子で書くべき第3楽章は数小節だけで筆が止まってしまったというのがその理由だそうです。※諸説あります。しかし <未完成交響曲>は第1楽章と第2楽章だけでも相当に美しくて、世界中で愛されています。(ひ)も大好きで、いつか演奏したいです。ちなみにシューベルトは「ザ・グレート」とも呼ばれる壮大な<交響曲第8番>を<未完成>の後に書いており、つまり作曲の途中で死んだから未完成ではないということです。

弦楽器の各パートの奏者が複数になり、低音のコントラバスが入ると【 弦楽アンサンブル String Ensemble 】、さらに管楽器や打楽器が入ると 【 オーケストラ Orchestra 】 な編成になります。

【 協奏曲 Concerto 】
「ソロ奏者+オーケストラ」という構成で、演奏会のプログラムにもよく登場します。オーケストラは比較的小規模な編成の場合が多いです。音楽の純粋な透明さを感じることができるという点で(ひ)の好きなジャンルの一つでもあります。モーツァルトは自身が演奏した<ピアノ協奏曲>を多く残しました。ブラームスがヨアヒムのために書いた<バイオリン協奏曲>など、名演奏家のために作曲された「当て書き」が多いのもコンチェルトの特徴です。ソロ奏者がオーケストラの伴奏なしで弾く部分は カデンツァ Cadenza といって、腕の見せどころになります。ソロ奏者の演奏がメインなので、時に第3楽章のメヌエット部分が省略されます。ザイツやヴィヴァルディの<バイオリン協奏曲>【動画】 【動画】 【動画】は、子どもたちの練習や発表会用に教本に登場する定番です。
 コンチェルトがある演奏会の場合、(ひ)はソロ奏者の演奏を間近で堪能するために最前列のド真ん中に席を陣取ります。クラシックの演奏会では人気薄の席なので、いつも余裕で席が取れて好都合です。

【 交響曲 Symphony 】
交響曲を演奏するためのオーケストラは、弦楽器・管楽器・打楽器合わせて数十人規模になります。スコア(総譜)を見ると、上から木管楽器・金管楽器・打楽器・弦楽器と並んだ16段とか18段とかのパートが同時進行しています。メロディに加えて和声や対旋律に富む分厚い音楽には鳥肌必至ですが、そんな複雑な演奏形態の基盤を築いたのはハイドンで、なんと100曲以上の交響曲を残しました。エステルハージ家の宮仕えだった頃には毎月新曲を作曲していたというから驚きです。後に続く作曲家たちは洗練を重ね、それが私たちの生きる現代の資本経済社会へと流れ着いた時には、聴衆が耳にする機会の最も多いジャンルがこの交響曲となりました。なので「クラシック=交響曲」と思われてしまいがちですが、そうとも限らないことが少しずつお分かりいただけていると嬉しいです。  それから、私たちはオーケストラの演奏を聴けるのは当たり前のように思ってしまいますが、たとえばシューベルトはかの<未完成>や<グレート>を含む9曲の交響曲を書き残したその一方で、自身はオーケストラでの演奏を生涯一度も聴いたことがなかったそうです。メンデルスゾーンが楽譜を発見しなければ、歴史のうねりの中に埋没して後世に生きる私たちが聴く機会は永遠になかったかもしれません。それほどに、交響曲という巨大な芸術を表現する、つまりオーケストラで演奏するのは、決して簡単なことではないのです。そんな奇跡にも近いオーケストラという演奏形態を、先人達は幾多の困難(主に戦争や政治問題)を乗り越えて守り通してきました。それは「音楽という美しく純粋な芸術は、聴く者の心を揺さぶるから」というシンプルで明解な理由だったからに違いありません。
 また、外的・社会的要因のみならず、ベートーベンの没後、ワーグナーやリストなどを筆頭に音楽家自らが新たな発展形態を求めようと試み、交響曲という様式を壊そうとしました。後世から歴史を見るとブラームスの交響曲第1番によって繋ぎ止められた格好ですが、表現者が次のスタイルを求めるのはある意味自然な動きで、それは現在に至るまで沸々と続いていることでしょう。
 このように、オーケストラによって演奏される交響曲は、音楽的にも社会的にも「人類の歴史の遺産」と言えるものです。そのオーケストラ・スコアを、今はインターネットから無料で入手することができます。全楽章というのはさすがにプロレベルの分厚い一冊になってしまいますが、好きな曲を一部でもいいのでスコアを見ながら聴いてみてください。きっと新しい発見があるはずです。※小さな「ポケットスコア」であれば1000円程度で販売されており、アマゾンでも購入できます。ぜひ手に取ってくださいませ。


ブラームス 交響曲第1番 【左】パート譜 と【右】ポケットスコア


【 オペラ Opera 】
オーケストラに加えて歌手や合唱団が入り、ソナタ形式ではなく3〜4幕の脚本を数時間(※時に数日)かけて演じるのが「オペラ」です。交響曲よりもさらに質の高い、つまり最上位の総合芸術として認識されています。映画「アマデウス」のストーリーは主にモーツァルトのオペラについて描かれ、交響曲や室内楽はほとんど出てこないことからも、いかにオペラが作曲家にとって重要だったかが分かります。
 合唱団を含めて総勢数百人規模となることが珍しくなく、したがっておいそれと上演できるものではありません。観ようと思えば、ウィーンやベルリン、ミラノ、パリ、ニューヨークなどの日常的にオペラを上演している劇場へ足を運ぶ以外は例外的になってしまいます。その多くは国家事業としての国立劇場です。なので生のオペラに触れるのはなかなか困難ですが、生演奏でなくともDVDが長与町立図書館に充実していますので、ぜひ一度ご視聴ください。
 管理人(ひ)は一度だけ、アクロス福岡で市民コーラスによる <椿姫 La Traviata> を観たことがあります。数年後に妻となる(ま)との初デートだったのは淡いおもひでです。※ それから実に25年の後、2022年9月17日に藤原歌劇団による <蝶々夫人 Madama Butterfly>を地元・長崎で観劇できたのはこの上ない感激でした。ジュネスでも弾いた<ハミングコーラス>のピュアな響きに涙腺が緩みました。2025年の国民文化祭で長響も演奏する予定があるそうで、ステージに乗れるように練習がんばりたいです。
 さて、オペラでも中心は指揮者です。指揮者は、舞台上の歌手と舞台下のオーケストラ・ピットをどちらも見渡せる位置に陣取ります。歌手は歌いながら演技をしますが、その音域によって(女声)ソプラノ・メゾソプラノ・アルト・コントラアルト(男声)テノール・バリトン・バス などに分かれます。ソプラノのヒロインに対して意地悪なメゾソプラノ、英雄のテノールに対して悪役のバスバリトンなど、不思議とそれぞれの音域に特徴的な役柄が割り振られます。驚くべきことに、オペラの歌手は広い広い劇場の舞台上から、なんとマイクなしの肉声で歌います。もはや楽器と化した肉体をフル稼働させるその歌唱力は圧倒的で、ある意味どのソロ楽器よりもパワフルかもしれません。もし機会がありましたら、ぜひ最前列でご堪能くださいませ。
 序曲 Overture、1人〜数人の歌手が歌い上げる曲は アリア Air、曲間の台詞部分は レチタティーボ Recitativo などの独特な用語も多いですが、その分「知れば知るほど面白く」なります。アンコール encore も アドリブ ad lib も プリマドンナ prima donna も ゲネプロ(ゲネラル・プローベ general probe)も、もろもろオペラ用語が元となっています。
 日本語訳は「歌劇」となるオペラに対して、「喜歌劇」と訳されるのが 【 オペレッタ Operetta 】 です。オペラのような大悲劇ではなく、庶民的・娯楽的な脚本で演じられるがオペレッタの特徴です。オーケストラや歌手など、演奏の構成はオペラと大差ありません。
ジュネスでは、モーツァルト晩年に大衆劇場で上演されたオペラ「魔笛」から <パパパの二重唱> や、レハールのオペレッタ「メリーウィドウ」から <ワルツ> を演奏したことがあります。

【 バレエ Ballet 】
ピットに陣取るオーケストラの演奏に合わせて、舞台ではダンサーが踊ります。オペラの歌手のような派手さはありませんが、シャッセ・パッセ・ジュッテ・パディシャ・・・その他もろもろ、ポジションや跳躍や回転などバレエにはたくさんのテクニックがあって、したがって知れば知るほど面白く、そして世界中に根強いファンが多い純粋な芸術です。フリフリの衣装を着たバレリーナだけではなく、筋骨隆々の肉体派男性バレエダンサーによる力技も見応えたっぷりです。お腹にでっぷりと脂肪組織が蓄積した(ひ)は間違っても真似できないような激しいアクションを、ダンサー達は軽々と跳ねるように踊ります。本当は相当に息が上がっているはずなのに、そんな素振りも見せません。あっぱれ ヨイヤー!ブラビッシマ&ブラビッシモー!
 バレエは子ども達の習い事としてもポピュラーですが、一度でいいからオーケストラの生演奏で踊らせてあげたいものです。余談ですが、ドガが描いた踊り子の絵に管理人(ひ)は心を奪われたことがあります。

オペラやバレエはフルで上演するのが大変なので、代表的な音楽部分をオーケストラの演奏会用に抜き出した【 組曲 Suite 】として演奏されることもしばしばです。むしろ親しみやすく、CDも容易に手に入るのでご活用ください。


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さて、演奏の編成や曲の構成は分かりました。次は【作曲家】を攻めてみましょう。

【大本流】
テレマン(1681-1767)、バッハ(1685-1750)、ヘンデル(1685-1759)、ハイドン(1732-1809)、モーツァルト(1756-1791)、ベートーヴェン(1770-1827)、ウェーバー(1786-1826)、シューベルト(1797-1828)、メンデルスゾーン(1809-1847)、シューマン(1810-1856)、ワーグナー(1813-1883)、スッペ(1819-1895)、ブルックナー(1824-1896)、ブラームス(1833-1897)、ブルッフ(1838-1920)、マーラー(1860-1911)、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)、レハール(1870-1948)、レーガー(1873-1916)、シェーンベルク(1874-1951)、クライスラー(1875-1962)、ウェーベルン(1883-1945)、ベルク(1885-1935)、ヒンデミット(1895-1963)、コルンゴルト(1897-1957)などなどなど

何はなくともクラシック界ではキャピタルの、ドイツ・オーストリアに脈々と伝わる大本流です。この流れは「モダン」と呼ばれる近・現代に至るまで現在進行形で続いています。「ニューイヤーコンサート」でお馴染みのヨハン・シュトラウス2世(1825-1899)は、紛れもなく生粋のウィーンっ子でウィーン気質を存分に表現した作曲家ですが、存命当時は「ポップス」的な位置づけの音楽家でした。ちなみに(ひ)はモーツァルトとシューベルトがお気に入りで、ワーグナーは退屈で蕁麻疹が出ますが、人間的なブラームスは大好きです。※逆の人もいるでしょう。ブルックナーは一生聴かなくても何も問題ありません。※意見には個人差があります。
ジュネスでは、バッハやヘンデルをはじめ、モーツァルトの<アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク> 第一楽章【動画】 【動画】 【動画】・第三楽章【動画】、ブラームスの<ハンガリー舞曲第5番>【動画】 【動画】や、西川先生渾身の編曲でシュトラウス2世のワルツ <美しく青きドナウ> <ウィーンの森の物語> を演奏したことがあります。

【イタリア】
コルレリ(1653-1716)、アルビノーニ(1671-1751)、ヴィヴァルディ(1678-1741)、スカルラッティ(1685-1757)などのバロック作曲家が思いつきますが、バロック音楽の祖とも称されるモンテヴェルディ(1567-1643)は、かのストラディバリやガルネリと同じくイタリア・クレモナ生まれの音楽家で、なんと生涯に18作ものオペラを作曲したそうです。そんな文化的背景を反映してか、サリエリ(1750-1825)、ケルビーニ(1760-1842)、ロッシーニ(1792-1868)、ドニゼッティ(1797-1848)、ベッリーニ(1801-1835)、ヴェルディ(1813-1901)、ポンキエッリ(1834-1886)、プッチーニ(1858-1924)などなど、イタリアにはオペラがメインの作曲家が圧倒的なのが若干とっつきにくさを感じさせてしまっています。映画「アマデウス」では、「イタリア語こそオペラにふさわしい言語」とドイツ語でのオペラ上演に反対するイタリア人音楽家が複数登場します。映画ではサリエリの激しい嫉妬を通じてモーツァルトの天賦の才が描かれますが、同世代のケルビーニもモーツァルトとは良きライバルだったそうです。
 兎にも角にも、私たち長崎人にとっては、プッチーニの<蝶々夫人>は絶対に外せませんね。ジュネスで演奏した <長崎県スポーツ行進曲><行進曲長崎> の中にも、そのメロディが取り入れられていました。
 オペラに限らず、バイオリンの名手でもあるタルティーニ(1692-1770)やパガニーニ(1782-1840)の超絶技巧曲、またクレメンティ(1752-1832)による<6つのソナチネ>や レスピーギ(1879-1936)の<ローマ3部作>など、長く親しまれている作品も多く残されています。
 なお、楽譜が現存する最古の音楽<グレゴリオ聖歌 cantus gregoria >はイタリア(ローマ・カトリック)の教会音楽で、現在の5線譜の由来となりました。二十六聖人記念館に類似の「ネイマ譜」が多く展示されていますので、是非一度 ご覧ください。さらに「フォルテ」や「ピアノ」を始めとする楽譜に書いてある音楽用語は、全てイタリア語です。「ドレミファソラシド」も元祖・ドレミの歌<聖ヨハネ賛歌 Ut queant laxis >の歌詞が語源で、やっぱりイタリアは「音楽の祖」で間違いなさそうです。

【フランス】
フランスにも、ベルリオーズ(1803-1896)、オッフェンバック(1819-1880)、ラロ(1823-1982)、サン=サーンス(1835-1921)、ドリーブ(1836-1891)、ビゼー(1838-1875)、フォーレ(1845-1924)、ドビュッシー(1862-1918)、サティ(1866-1925)、ラヴェル(1875-1937)、フランス6人組などなど、多くの大作曲家がいますが、お好みの問題もあり、(ひ)はあまり多くのことを知りません。
ちなみに 、バレエ用語はほぼ全てフランス語です。それから、ダ=サロ・ストラディバリ・ガルネリなど弦楽器本体の本拠地をイタリアとするならば、トルテ・サルトリ・ペカットなど現代の弓の本拠地はフランスで、デタッシェ・マルテレ・ソーティエなど弓のテクニックに関する用語も多くはフランス語です。
ジュネスはドリーブのバレエ「コッペリア」から、<マズルカ><ワルツ> を演奏したことがあります。

【ロシア】
「大本流」に負けず劣らず、グリンカ(1804-1857)に始まり、いわゆるロシア5人組の ボロディン(1833-1887)、キュイ(1835-1918)、バラキレフ(1837-1910)、ムソルグスキー(1839-1881)、リムスキー=コルサコフ(1844-1908)や、チャイコフスキー(1840-1893)、グラズノフ(1865-1935)、スクリャービン(1871-1915)、ラフマニノフ(1873-1943)、ストラビンスキー(1882-1971)、プロコフィエフ(1891-1953)、ハチャトゥリアン(1903-1978)、カバレフスキー(1904-1987)、ショスタコービッチ(1906-1975)、シュニトケ(1934-1998)などなどなど、ロシアは蒼々たる大作曲家を綿々と輩出し続けています。民族音楽を積極的に取り込み、総じて「暗く・重厚な」音楽という印象ですが、チャイコフスキーはバレエを「最も純粋な芸術」と位置づけ、世に送り出したバレエ3部作<白鳥の湖・眠れる森の美女・くるみ割り人形>は世界中で愛されています。ジュネスでも <白鳥の湖> や、くるみ割り人形から <花のワルツ> <行進曲> 【動画】を演奏しました。
また、長崎への原子爆弾投下を題材としたシュニトケのオラトリオ『長崎』は、長崎人として押さえておきたい一曲です。

【ビバ地元】
ヨーロッパ各国には、それぞれの国を代表する国民的作曲家がいます。簡単に思いつくだけでも、
 ・イギリス: パーセル(1659-1695)、エルガー(1857-1934)、ヴォーン=ウィリアムズ(1872-1958)、ホルスト(1874-1934)、ブリッテン(1913-1976)、レノン(1940-1980)、マッカートニー(1942- )、マーキュリー(1946-1991)、ロイド=ウェバー(1948- )
 ・チェコ: スメタナ(1824-1884)、ドヴォルザーク(1841-1904)、ヤナーチェク(1854-1928)
 ・フィンランド: シベリウス(1865-1957)
 ・ノルウェー: グリーク(1843-1907)
 ・ポーランド: ショパン(1810-1849)
 ・ハンガリー: リスト(1811-1886)、バルトーク(1881-1945)、コダーイ(1882-1967)
 ・ベルギー: ヴュータン(1820-1881)
 ・スペイン: サラサーテ(1844-1908)、ロドリーゴ(1902-1999)
 ・デンマーク: ルンビー(1810-1874)、ニールセン(1865-1931)
などを挙げることができます。ジュネスはスメタナの代表曲「我が祖国」から <モルダウ> を演奏したことがあります。

【アメリカ合衆国】
フォスター(1826-1864)、スーザ(1854-1932)、ガーシュイン(1898-1937)、コープランド(1900-1990)、アンダーソン(1908-1975)、バーバー(1910-1981)、バーンスタイン(1918-1990)、マンシーニ(1924-1994)、ウィリアムズ(1932- )、ライヒ(1936-)、ジャクソン(1958-2009)ほか
ヨーロッパを離れて新世界アメリカも、特に大戦中に多くの指揮者・作曲家・演奏家が亡命して音楽を継続したことで、ヨーロッパに負けず劣らずの拠点になりました。後にミュージカル【動画】 【動画】や 映画音楽【動画】にも発展し、私たち日本人に馴染みの深い音楽も多いと思います。ジュネスでも、アンダーソンの <シンコペイテッド・クロック>【動画】 【動画】 【動画】 【動画】や、 フォスターの <オールド ブラック ジョー> <夢路より> <草競馬> を演奏しました。

【日本・長崎・長与】
我が国・日本、そして我らが故郷・長崎にも、後世に名を残す偉大な作曲家が多数です。ジュネスも たくさん 演奏しました。
岡野貞一(1878-1941)<春の小川> <ふるさと>、 滝廉太郎(1879-1903)、 本居長世(1885-1945)<ななつの子>、 中田章(1886-1931)、 山田耕筰(1886-1965)<中国地方の子守歌>、 中山晋平(1887-1952)、 成田為三(1893-1945)<浜辺の歌>、 草川信(1893-1948)<夕焼け小焼け>、 古賀政男(1904-1978)、 服部良一(1907-1993)、 古関裕而(1909-1989)<長崎の鐘>、 伊福部昭(1914-2006)、 中田喜直(1923-2000)、 芥川也寸志(1925-1989)、 武満徹(1930-1996)、 中村八大(1931-1992)<上を向いて歩こう>、 宮川泰(1931-2006)、 早川正昭(1934-)<バロック風「日本の四季」より『春』>、 服部克久(1936-2020)、 久石譲(1950- )<となりのトトロ> <崖の上のポニョ>、 さだまさし(1952- )、 指方浩(1952- )<長与町町歌「明日をひらく」>、 西村朗(1953-2023)、 千住明(1960- )、 宮川彬良(1961- )、 大島ミチル(1961- )、 服部隆之(1965- )、 福山雅治(1969- )、 市原隆靖(1970- )ほかほか


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人名がたくさん出てきたので、ついでに【指揮者】の面々を考察してみましょう。

【指揮者】
ハイドンもモーツァルトもベートーベンも、マーラーもリヒャルト・シュトラウスも、自作の曲は自分で指揮をしていました。作曲家の没後はいわゆる「職業指揮者」の指揮によって演奏されますが、指揮者として名を残しているのは、主に録音技術が一般的になりだした20世紀以後の面々です。この「録音黎明期」にあたる時代の名指揮者、フルトヴェングラー(1886-1954)、ワインガルトナー(1863-1942)、トスカニーニ(1867-1957)、ワルター(1876-1962)、クレンペラー(1885-1973)、クナッパーツブッシュ(1888-1965)、エーリヒ・クライバー(1890-1956)などには根強いファンが世界中に多く存在します。それは、おそらくコストがバカ高かったであろう黎明期に、それでも録音したいと思わせるほどの名演奏だったからに違いありません。兎にも角にも、録音のおかげで当時の名演を現在に生きる私たちでも聴くことができます。録音の未熟さは後の技術者によるリマスターでかなり改善され、なおかつ著作権が切れてパブリックドメインとなり、CD全集などは驚くほど安価で入手できるので、入門にも最適です。ぜひお試しください。(ひ)も999円で買ったワルター指揮:コロンビア交響楽団の演奏によるベートーベン交響曲全集は愛聴盤かつ決定盤で、今後の人生ずっとお伴になるでしょう。

それから、この世代の音楽家は、大戦やナチズムの影響でドイツ残留組(フルトヴェングラーなど)とアメリカ亡命組(ユダヤ系のワルターやクレンペラーなど)に分かれるのがもう一つの特徴です。ハンガリー人のジョージ・セル(1897-1970)は演奏旅行中に第二次世界大戦が勃発したため、帰国をあきらめてそのままアメリカに定住したそうです。なんともはや。そして後のクリーブランド・オーケストラとのコンビは歴史に大きな足跡を刻み、没後50年で発売されたCD106枚組!の全集を(ひ)は迷わず購入してしまいました。絶対に買って良かった、以後の人生ずっとお伴となるでしょう。
かの <ドレミの歌> や <エーデルワイス> でお馴染みの名作ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」も、終盤はナチスから逃れる亡命物語になります。ジュネスは平和の継承を目的として結成されましたが、音楽の歴史も戦争とは切って切り離せない大きな影響を受けています。西川先生が教えてくださった通り、音楽は平和の象徴なのです。

かのカラヤン(1908-1989)や ベーム(1894-1981)などは、全盛期が大戦後でもうひとつ後の世代になりますが、巨匠カラヤン指揮の第九を収録するためにCDの収録時間が設定されるなど、やっぱり影響力が大きかったことがうかがえます。

レジェンドな指揮者ばかりではなく、現代の指揮者でも気になる存在の指揮者がいれば、ぜひご贔屓くださいませ。管理人(ひ)は、長男(K)のことを「覚えておくよ」と言ってくださったパーヴォ・ヤルヴィ氏(1962- )、音楽を「最も美しい宝物」と表現したロシアのマリス・ヤンソンス氏(1943-2019)、フランスのマーク・ミンコフスキー氏(1962- )、ベネズエラのエル・システマ出身、グスタボ・ドゥダメル氏(1981- )などがとっても気になるのでたっぷり贔屓しています。現代の録音技術は素晴らしく、指揮者の息づかいまで聴こえてくるので、指揮者&好きな曲でいい組合せがあれば、ぜひCDやDVDを購入してご堪能ください。

ところが!
みなさま、クラシックのCDやDVDを買って聴こうとしても、「曲名が長すぎてワケワカラン!」となった経験がありませんか? しかし実は、ここまでを読んでもらったら、その曲名が理解できるようになっているはずです!
 【曲名】(作曲家):(ジャンル)(番号)(調性),(作品番号):(楽章)
 【演奏者】(指揮者):(オーケストラ)  ※ 協奏曲の場合は(ソリスト);(指揮者):(オーケストラ)
というのが表記の基本的なルールで、たとえば(ひ)の iTunes ライブラリーの中にある
 Brahms: Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68: I. Un poco sostenuto - Allegro、 Nikolaus Harnoncourt: Berliner Philharmoniker であれば、
 ブラームス作曲:交響曲 第1番 ハ短調, 作品68: 第1楽章、 ニコラス・アーノンクール指揮:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団による演奏 となり、ラジオの放送などでもこのように紹介されます。

作品番号(Opus)は、発表・出版された順に付けられた通し番号で、当然ながら若い番号であれば作曲家が若いときに書いた作品となります。ベートーベンの Op.1/1、ピアノトリオの第一番は、長調も手伝って瑞々しい若さが溢れているように聴こえます。また作曲家によっては、後の研究者によって編集し直された場合もあります。例)バッハのBWV、ハイドンのHob(ホーボーゲン番号)、モーツァルトのK(ケッヘル番号)、シューベルトのD(ドイッチュ番号)など
1人の作曲家による作品がジャンルに1つしかなければ、番号がなくなります。例)ベートーベンのバイオリン協奏曲 など
楽章の次に書かれているのは作曲家が楽譜の最初に記した演奏記号で、速度記号であることが多いです。日本語に訳されることはありませんが、時に別名のように呼ばれることがあります。例)ドボルザークのラルゴ(交響曲第9番の第2楽章)、マーラーのアダージェット(交響曲第5番の第4楽章)など

さて、
上記までは国や作曲家に分けて述べてきましたが、「時代」つまり時間軸による分類もクラシック界の共通言語としてよく使われるので、その特徴とともに理解しておくとよいでしょう。もちろん「バロック以前」の音楽も存在しますが、コンサートで実際に演奏されることはほぼないと思います。一般的な、特にアマチュア・オーケストラの演奏会では古典派からロマン派の曲が圧倒的で、「モダン」とも呼ばれる近・現代の音楽は、聴衆のウケ(つまりチケットの売れ行き)や要求される演奏技術も含めて挑戦的となるでしょう。※ アメリカの演奏会では、音楽の流れを後世に伝えるという意図で、あえてモダンな曲をプログラムに入れることも多いそうです。
 16〜18世紀:バロック ヘンデル、バッハ、ヴィヴァルディなど
 18〜19世紀:古典派 ハイドン、モーツァルト、ベートーベンなど
 19〜20世紀:ロマン派 シューベルトやメンデルスゾーンからマーラーくらいまで
 20世紀以後:近・現代音楽 シェーンベルクやストラビンスキー以後


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人名ばかりではなく、【楽器】や【オーケストラ】についても学びましょう

【ソロ楽器】
ピアノ、バイオリン、チェロなどがソロ楽器としてソナタや協奏曲で主役となることが多いですが、そのような花形の楽器に限らず、下記のオーケストラに含まれるほぼ全ての楽器でレパートリーがあります。歴史上には大演奏家の面々が数多く存在しますが、挙げるとまた人名ばかりになってしまいますし、将来的にも名演奏家は数多く登場するでしょうから、ここでは割愛します。ピアノのショパン(1810-1849)とリスト(1811-1886)、バイオリンのパガニーニ(1782-1840)やハイフェッツ(1901-1987)、ビオラのプリムローズ(1904-1982)、チェロのカザルス(1876-1973)などが歴代横綱クラスでしょうか。

2020年、世の中ではベートーヴェン生誕250年で話題になりましたが、バイオリニストのアイザック・スターン(1920-2001)生誕100年でもありました。以前ラジオで聴いて、また下記の「The Art of Violin」で映像を見て「!」と感じていた管理人(ひ)は、記念に発売されたCD75枚組!のコンプリート録音を迷わず購入してしまいました。ちょっとだけ手間でしたが全て iTunes にリップして、そのとろけるような音色に毎晩うっとりしています。以後の人生、ずっとお伴になりそうです。

豆知識ですが、チェンバロは弦をはじく構造だったので強弱がつけられず、その欠点を補うためにハンマーでたたいて強い音(フォルテ)と弱い音(ピアノ)を使い分けられる鍵盤楽器「ピアノフォルテ」が誕生しました。なのでピアノの略号は「Pf」となります。時代はモーツァルトやベートーベンの頃で、つまりそれ以前にはピアノソナタやピアノ協奏曲は存在しませんでした。

【オーケストラ】
<スターウォーズ> <ジョーズ> <E・T> <インディージョーンズ> などなど数々の映画音楽でお馴染みの作曲家ジョン・ウィリアムズ氏(1932- )は、オーケストラを「表現できない音楽はない、人類の歴史の遺産である」と表現しました。全くその通りだということは、氏の音楽を聴けば、さらに楽譜を見れば、また音楽の歴史を紐解けばよく分かることと思います。その中で自身が演奏できれば、どのような喜びが待っているのでしょうか?
オーケストラを構成する楽器は、一般的に
 弦楽器 strings:バイオリン(第1・第2)、ビオラ、チェロ、コントラバス ※ピアノやハープは「撥弦楽器」
 木管楽器 woodwinds:ピッコロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット(バスーン)
 金管楽器 brass:ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバ
 打楽器 percussions:ティンパニ、小太鼓、大太鼓、シンバル、木琴、鉄琴、ドラ、ベルなど です。

ジャズやポップスでお馴染みのサキソフォンや、吹奏楽には欠かせないユーフォニアムは、残念ながらオーケストラでの演奏に含まれることは極めて例外的です。
スコア(総譜)を見ると、おおむね高い音を出す楽器はト音記号 G clef、低い音を出す楽器はヘ音記号 F clef で楽譜が書かれていますが、ビオラだけは見慣れないハ音記号 C clef です。またの名をアルト記号とも言いますが、それは5線譜のど真ん中がドの場合で、中心がドの位置を示すハ音記号は、オールマイティのジョーカーの如く5線譜を上下に移動できるのだそうです。かの J.S.バッハが肖像画の中で手に持っている楽譜にも描かれています。
クラリネットやホルンは「移調楽器」といって、楽譜の音と楽器から出ている実音が異なり、スコアでも調号(♯や♭の数)が他の楽器とは違っています。素人目には混乱の元となりますが、しかしそれは音楽の長い歴史の中で思い通りの音階を出せない困難を解決するために捻り出された、先人の苦労とアイディアの結晶なのだと思います。

それぞれの楽器や音色の特徴などは、(ひ)がここで文章で説明するよりも、ブリッテン作曲の「青少年のための管弦楽入門 The Young Person's Guide to the Orchestra Op.34」を、小澤征爾氏による解説入りのCDで聴きながら、絵本「こどもたちのオーケストラ入門」を読んでもらえれば、とてもよく分かります。是非お子さまと一緒にお試しください。指揮者クラウディオ・アバド氏(1933-2014)の著による「アバドのたのしい音楽会」も楽しく学べる絵本です。※下の【References】をご参照ください。

また近年は、作曲家が作曲した時代に演奏された音を忠実に再現することを目的として、古楽器で演奏するようなオーケストラもあります。それぞれの楽器も楽器の構成も、そして細かく言えば音程も、現代とはやっぱり異なります。例えば、チェロはエンドピンがなく床に直置きで、バイオリンは肩当てもあご当ても外して弦は巻きなしのプレーンガット弦、弓も現代で一般的なフランス式とは違うバロック弓です。指板の角度や長さまでは変えられませんが・・・っと、あまり細かいことを言うのはやめておきましょう。当時演奏されていた音律や音程について語りだすと、物理学から始まる分厚い専門書になってしまいます。

【オーケストラを観てみよう・感じてみよう!】
「バイオリンはどうですか?」というインタビューの質問に、「いつも緊張します」と答えたジュネス団員がいました。奏者だけではなく、聴衆の方も息を潜めて緊張していますよ。また、(ひ)がオーケストラの中で演奏すると、後方のホルンの音に共鳴してビオラがビンビン震えて、いつもよりよく鳴っているように感じます。このように生の演奏会では、演奏者・聴衆や楽器そのものからも発せられる緊張感が満ちた空気の中を、音の振動が広がります。スピーカーから出る音とは違って、代え難い非日常的な興奮を感じることができるでしょう。オーケストラの演奏は、聴くだけではなく観ると・感じるともっと楽しくなります。ぜひ、ご家族みなさまで演奏会に足を運んで、生のクラシック音楽を観て・聴いて・感じてください。

ところが、オーケストラで演奏される交響曲がクラシック音楽の中で聴く機会が最も多いとは上述しましたが、それは多分に現代の資本経済構造的な理由によるもので、その結果チケットは1枚1万円となり、気軽に家族全員で楽しむというわけにはいかなくなってしまうのが、クラシックの壁を高くしているようで非常に残念でなりません。ワーグナーやマーラーは自身の才能を誇示したいがためイタズラに演奏の規模を大きくしましたが、それは国家予算規模の資金力があってできることで、本当に芸術としてあるべき姿だったかといえば、疑問は拭えません。※意見には個人差があります。

幸いなことに、私たちが暮らすここ長崎では、プロフェッショナルの演奏家で構成される 長崎OMURA室内合奏団 も、市民オーケストラの 長崎交響楽団諫早交響楽団フィルハーモニックオーケストラ長崎 も、定期演奏会のチケットはかなり良心的な料金に設定されています。無料のアウトリーチ・コンサートも数多く開催されています。長崎大学や長崎北高校の学生オーケストラもあります。つまり、これは本当に幸福&幸運なことだと思うのですが、私たちは故郷・長崎で、生のクラシック音楽を楽しむ機会に多く恵まれているということです。

もちろん生のオーケストラの演奏を観るのが一番ですが、その前にテレビでも観ることができます。
・まず、毎週日曜日午後9時からの「クラシック音楽館」では、主にNHK交響楽団の演奏会が放送されています。プログラムも比較的一般的で分かりやすい(はず)です。時に海外からの来日公演も放送されますが、(ひ)は数年前に放送を観て「!」と感じたマーク・ミンコフスキー氏のファンになりました。
・年末にはN響の第九演奏会が開催され、毎年世界的な指揮者が招かれます。2017年は(ひ)がフィラデルフィア響で観たクリストフ・エッシェンバッハ氏の指揮による第九演奏会が放送されました。
・それから毎年お正月の元旦には、ウィーン・フィルによる恒例の「ニューイヤーコンサート」が世界中に生中継されます。その中継を毎年楽しんでいる視聴者の一人(ひ)も、これが縁でウィーン・フィルのファンになりました。団員の中には補聴器をつけているフルート奏者の方もいて、励まされることがあります。
・ウィーン・フィルとは東西横綱のベルリン・フィルの演奏も、インターネットの動画配信サイト「Digital Concert Hall」で観ることができます。フルだと有料ですが、お試し映像を見ると画質も音質も素晴らしく、実際にベルリンへ行くのと近い興奮を感じられるという意味では格安なので、(ひ)もいつか入会しよう思います。コンサートマスターを務める樫本大進氏も多く登場するので、日本人としてやっぱり応援したくなります。

・数年前までEテレで放送されていた、宮川アキラさん出演の「ゆうがたクインテット」が、子どもと一緒にクラシックを学ぶのにとても適した番組でした。おかげで長男(K)は、クラシックの曲を鼻歌で歌いながら遊んでいました。残念ながらスコアさんに声をあてていた齊藤晴彦さんが亡くなられ、番組の復活は見込み薄となってしまいましたが、その代わり、アキラさんは「らららクラシック」に解説者として出演する機会が増えたので、ぜひご覧ください。
・この「らららクラシック」は、アキラさんなどプロの音楽家による楽曲解説で分かりやすくクラシック音楽を学べるのが一番の見どころです。2017年4月に高橋克典氏の司会にリニューアルされる前までは、レギュラー出演者の加波沢美濃さんが毎週解説されていました。今考えると、たった一人で毎週毎週この解説を準備するのは、相当なご負担だったと思います。美濃さんは、きっと音楽が好きだったので何年間もこの大変なお仕事を続けることができたのでしょう。おかげで(ひ)も多くのことを学びました。有り難うございます。(ひ)は石田衣良氏の司会も大好きでした。
・「らららクラシック」は2021年3月をもって終了しましたが、後継の「クラシックTV」での清塚信也氏の解説もなかなかです。レギュラー出演の鈴木愛理さんが可愛くて(矯正してあげたくなっちゃいます)、(ひ)も楽しみに見ています。


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【ラジオのススメ】
クラシック音楽の作曲家は多数、曲はもっと多数、指揮者やオーケストラによる演奏の違いまで入れるとほぼ無限、とは冒頭に記述しました。1名の頭脳でその全てを理解することは不可、ということはつまり、いつまでたっても未知の音楽が必ず残っているということです。そのような未体験の音楽との出会いの場として、ぜひラジオをご活用ください。

 NHK-FM では、日々クラシック音楽の番組が放送されています。曲がオンエアされるだけではなく、作曲家の生涯や作曲の背景などが同時に解説されるので、さらに理解が深まります。<らじるらじる> の聞き逃し番組配信サービスを利用すれば、決まった時間にラジオ桟敷に陣取る必要はなく、通勤・通学などのスキマ時間で聴くことができます。いい時代になったものです。

・本日の管理人(ひ)は、「クラシック・カフェ」でラヴェル作曲の「左手のためのピアノ協奏曲」を初めて聴いて、大河ドラマ「女城主 直虎」のテーマ曲を連想しました。戦争で右腕を失ったピアニストからの依頼で、すでに存在していたサンサーンスやツェルニーの左手曲を研究して作曲したそうです。この色彩豊かな音楽を、現代のピアニストも左手だけで弾いているのか、映像を見てみたくなってしまいました。もちろん、舘野泉さんのことも思い出しました。
・最近の(ひ)は、ピアニスト&作曲家の加藤昌則氏による「鍵盤のつばさ(鍵つば)」がお気に入りです。ボレロ実況中継とか最高でした。メロディ編だけでなく、ぜひ伴奏編も聴きたくて楽しみに待っています。
・お馴染み枠では、過去の「きらクラ」「きまクラ」古くは渡辺徹氏の司会による「おしゃべりクラシック」から長く続いている日曜日の「かけるクラシック」も、サキソフォン奏者の上野耕平氏とモデルの市川さんとのトークが面白くて、毎週楽しみです。
・不定期で放送されるN響の定期演奏会は、演奏だけではなくマエストロのカーテンコールの実況中継も(他に例がないので)聴きどころだと思います。演奏に「!」と感じれば、後日テレビで放送される「クラシック音楽館」が楽しみになります。
・そして金曜日の午後は「オペラ・ファンタスティカ」です。毎週いつも車での移動中に番組が始まり、あらすじを聴いたところでそのドロドロした&非論理的なストーリーに「もっと聴きたい」と思ったところで泣く泣く到着していたのですが(つまり欲求不満)、ついに <らじるらじる> で配信されるようになりました。司会の室田尚子氏によると「オペラは愛と人生を教えてくれる教科書」だそうなので、ぜひとも愛と人生を学びたいと思います。

というわけで、ラジオを聴けば、未知との出会いのチャンスが日々訪れて、クラシック音楽の世界とのつながりがグッと広がります。もちろん無料です。YouTube動画ばかりではなく、NHK-FM を エア・チェック(死語?)しましょう!。


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【音楽家と日本】
クラシックの本拠地・ヨーロッパと 我が国・日本は、地図では地球儀の裏側でも、音楽の世界では意外と近い関係にあります。
まず、音楽家の中には少なからず日本好き・日本贔屓な面々が存在します。
 指揮者のカール・ベームは、最晩年の1970年代に度々日本への演奏旅行を最優先でスケジュールし、日本の聴衆を「考え得るかぎり最も理想的で大切な人々」と表現しました。
 イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリッテンは、来日した際に<隅田川>という能を観て感動し、後にそのストーリーに自身の曲をあてたオペラ<Curlew River>を発表しました。
 かのレナード・バーンスタインは、日本人の指揮者や演奏家を積極的に教育・登用し、生前の最後の仕事も札幌で若手演奏家を指導されたそうです。
 バレリーナのシルヴィ・ギエムは大の親日家として知られ、引退公演は本国フランスよりも多く日本の各地を回りました。そして最後は2015年の大晦日にカウントダウンで東京バレエ団とともに【ボレロ】を踊り、この公演は(ひ)もテレビで観て鳥肌が立ちました。最後のメッセージは「16歳の時に日本と出会っていなかったら、違う人生になっていたでしょう」という文から始まっていました。
 とあるテレビ番組では、元ウィーンフィルのコンサートマスターでもあるダニエル・ゲーデ氏が、千葉県の小学校の弦楽合奏クラブをご指導され、氏の言葉や行動に子どもたちに対する愛情がにじみ出ていてとても感動しました。※ちなみに氏が率いるゲーデ四重奏団が時津カナリーホールでコンサートをしたときのアンコール曲は、さださんの「秋桜」でした。
 また、樫本大進氏に限らず、ヨーロッパのプロ・オーケストラの中では多くの日本人演奏家の方々が活躍されています。かのウィーン・フィルにもカズキ・ナオキのご兄弟をはじめ日本にルーツを持つ団員が複数いらっしゃいますし、前コンサートマスターのライナー・キュッヒル氏の奥様は日本人で、日本を訪れて活動されている報道を度々目にします。そういえばビオラ奏者の方も日本の女優さんと結婚されましたね。近年のニューイヤーコンサートでは、演奏を終えた楽団長のダニエル・フロシャウアー氏がNHKの放送ブースを訪れ、日本向けの中継に出演されるのが恒例となっています。
このような例は、挙げれば限りないほど本当に数多くあるでしょう。

2011年の東日本大震災の後には、日本のためにと義援活動が相当でした。フロシャウアー氏を含むウィーン・フィル団員やシルヴィ・ギエムをはじめ、数多くの音楽家が東北各地を訪れていたのが報道で度々見られ、いつも感動しました。
身近なところでも、OMURA室内合奏団の定期演奏会に訪れるソロ奏者は、「村嶋さんの言うことなら」と招きに応じて来てくださるそうです。そして私たち県民に音楽の素晴らしさを届けてくれます。

地理的な距離のみならず、歴史や文化の違いを超えた良好な関係というのは、お互いに敬意をもって接するからこそ生まれ・維持されるものだと思います。長く大切にしたいものです。


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【最後に】
なるべく無駄のない文章になるようにと努力しましたが、知っておきたいことは言葉を惜しまず書きました。その結果かなり長くなってしまった文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。クラシックのことを正しく知り、少しでも好きになってもらえましたら多幸です。
 30代も半ばを迎えた頃の管理人(ひ)は、いつのまにかクラシック音楽を好んで聴くようになり、演奏会にも家族で足を運ぶようになっていました。それまでクラシックのことは何も知りませんでしたから、上記はそれ以来の(ひ)自身が歩んだ学びの軌跡でもあります。

 そして、いつそのような思いが心に宿ったのか定かな記憶がないままに、今度は自身で「バイオリンを弾いてみたい」というおぼろげな欲望を抱いていました。その欲望は、長男(K)が受講した長与町主催の「子どものための弦楽器講座」によって実現への扉が開かれました。(K)がジュネス弦楽アンサンブルに入団し、(ひ)も子どもたちに混じってバイオリンの練習をする幸運に恵まれたのです。するとほどなく、遠い過去に感じたある感覚が呼び戻されました。それは、小学校の体育館でオーケストラの演奏を聴いた時に感じたのと同じ、あの「ゾワゾワっと全身に鳥肌が立つ」感覚です。CDを聴いているだけでは味わえない醍醐味が、生の音楽には間違いなく存在します。そしてできれば、大人・保護者も是非子どもたちと一緒にバイオリンを弾いてみてください。壁は決して高くありません。仲間もたくさんいます。我が子と一緒に演奏できるなんて、これ以上の喜びは考えつきません。(ひ)にとっての西川先生や石井先生、師匠の岩永先生のように、尊敬する人物との出会いも待っているでしょう。
 クラシックを学ぶのも、バイオリンを練習するのも、少しずつでいいのです。一度しかない人生で好きなことができるように、(ひ)も残りの人生を少しずつ楽しむつもりです。

追記:管理人(ひ)がバイオリンを始めて数年後、せっかく子どもたちに混じって弾くのですから、子どもたちでは弾けない ビオラ のパートを補うために、楽器を購入して演奏に加わってみました。すると、和音をハモったり内声で歌ったりリズムを刻んだり、対旋律や時にバッチリ目立つメロディが回ってきたりして、単に音域が違う楽器というだけではない面白さがたくさんあることを知り、演奏中に鳥肌が立つことがさらに増えました。楽譜がハ音記号だったり、#や♭が付くと3の指が高く・1の指が低くなってバイオリンよりも大きな楽器では弾きづらかったりと、確かに難しいこともあります。しかし、(ひ)でもオーケストラに入団して聴衆の前で交響曲を演奏できるようになったのは、所有しているだけでも珍しいというビオラがもたらしてくれた幸運だし、ビオラのおかげで「四重奏で演奏する」という秘かな夢 secret desire を叶えることもできました。さらに、上達が早い子どもたちにバイオリンの腕前は抜かれても「ビオラのおじさん」として定位置を確保するという新たな目標もできました。これ以上の喜びは想像できません。もちろん一人ではこのような挑戦はできませんでしたから、導いてくださった先生・子どもたち・仲間の皆様に感謝します。


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【References】
きっと役に立つ参考文献です。それほど高価なものではありませんが、全て管理人(ひ)が所有していますので、貸し出しが可です。どうぞ遠慮なくお申し付けくださいませ。

「こどもたちのオーケストラ入門」
監修・三枝成章、文と絵・矢吹申彦、評論社
フルート奏者の「おじさん」の視点で、オーケストラの楽器や「青少年のための管弦楽入門」の解説が詳しいです。

「アバドの楽しい音楽会」
石井勇・末松多壽子訳、評論社
2014年に惜しまれつつ亡くなった指揮者、クラウディオ・アバド氏の著による絵本です。7歳の時に初めて行ったミラノのスカラ座で、ドビュッシーの<ノクターン>を聴いて指揮者を志したことなどが語られています。指揮者の仕事の解説が分かりやすいです。

「青少年のための管弦楽入門」
指揮者の小澤征爾氏が、子どもたちのために<ピーターと狼> <動物の謝肉祭> <青少年のための管弦楽入門> を解説しながら演奏するCDです。

「はじめてのオーケストラ・スコア」
野本由紀夫著、音楽之友社
「らららクラシック」質問箱のコーナーで、いつも解説がたいへん分かりやすかった野本由紀夫氏の著書です。もとはと言えば音楽大学付属の高校生を対象に、オーケストラやスコアのことを教科書的に解説するために執筆されたそうで、私たち初心者にもとても分かりやすく勉強になる本です。

「栄光のウィーン・フィル」
オットー・シュトラッサー著、音楽之友社
ウィーン・フィルで長く楽団長を務められた、第2バイオリン奏者のシュトラッサー氏による著書です。とても厚くて読むのが大変ですが、読み終わった時にはいっぱしの「ウィーン・フィル通」ができあがっていることでしょう。大戦続きのヨーロッパで、歴史の波にもまれた様子が克明に記録されています。ヒットラー最悪です。なんだかトランプも似たような状況でコワイです。

「The Art of Violin」
指揮者の項にもある録音黎明期以後の、バイオリンの大家たちの映像が収められている貴重なDVDです。現役奏者のイヴリー・ギトリス、イツァーク・パールマン、ヒラリー・ハーンによる解説も興味深いです。クラシックに限らず少々専門的な知識・用語を要するようなコンテンツでは日本語訳が怪しくなるのが難点なので、是非原語の英語でお楽しみください。そんなに難しくないです。

映画「アマデウス」
もしもタイムマシンがあったなら、250年前に行ってモーツァルト氏やストラディバリ氏とお話ししたいと思うことが時々ありますが、少しだけそのような気分になれる映画です。劇中の音楽はネヴィル・マリナー指揮 Academy of St.Martin in the Fields による、たいへん美しい演奏です。英語も大変明解で、「チャーミング」というのは音楽の世界では非常に有効な褒め言葉であることをこの映画から学びました。長崎人には、神父様の首飾りがからすみに見えてしまってしかたないです。

ミュージカル「The Sound of Music」
著作権が切れたので、この名作のDVDを500円で購入することができます。絶対500円以上の価値があるので、是非ご購入ください。作詞家ハマースタインが亡くなる数か月前に書いた、名コンビ「ロジャース&ハマースタイン」の最後のミュージカル作品で、したがって名曲の数々が惜しまずに詰め込まれています。子どもたちの英語の学習にもピッタリですので、是非英語字幕でお楽しみください。


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【おまけ・クラシックの経済学】
・クラシックが趣味というと「お金がかかるなあ」という印象があるかもしれませんが、実は案外とそうでもないのです。確かに、収録時間46分のLPレコードを、一枚あたり数千円かけてレコード店で購入する必要があった時代には、誰もが楽しめる趣味ではなかったと思います。しかし私たちが生きる現代では、アマゾンでCDもDVDも確実に安く・手軽に入手できます。アマゾンで見つけられなくても、Apple の iTunes Store で在宅のまま入手することができます。サブスクリプション・サービスをうまく利用すれば、いつでも好きな音楽を好きなだけ聴けます。いい時代になったものです。

・一方で、「学生時代にクラシック喫茶に通いつめては、緊張しつつ針を落として好きな曲を何度も聴いた」というような先人達の苦労話を聞くと、少し羨ましく感じることもあります。でもやっぱり、気軽に安く楽しめることの方が私たち消費者にとってはずっとありがたいと思います。ちなみに(ひ)の実父は厄年にゴルフにハマって家族を放置しお金も相当に浪費しましたが、それとは比べるべくもなく遥かにマシな趣味だと考えます。

後日談:かつて、義父がレコードで「カルメン」を聴かせてくれて、幼かった(K)がキャッキャと喜んで拍手したことがありました(もちろん、超カワイかった!)。先日、そのレコードブレーヤーとレコード約20枚を、「もう聴かなくなったから」と義父より譲り受けました。プレーヤーを自室のアンプに接続して、選曲センスの良いクラッシックやジャズのレコードはすいぶんカビていたけれど、ヘッド部5連の歯ブラシでゴシゴシ洗浄して、一連の作業を楽しみながら環境を整えました。中学生くらいまでは普通にレコードを聴いていた世代の(ひ)、デジタル音源の方が音が良くて便利なのは分かっているけれど、大きなレコード盤を扱いながら 当時の懐かしさや先人達の苦労の追体験を楽しんでいます。幸運にも探してみればかなり品揃えが豊富な中古レコード店が長崎にあって、時に出向いては宝探しのような気分でレコードを選んでいます。オイストラフ演奏のクロイツェルと春のソナタ集を見つけたときには感激しました。少し怖いけど次は思い切って店長さんに質問して、ニューオーリンズ・ジャズのレコードを探そうと思っています。1枚 数百円〜1000円くらいなので、ちょうどよくお楽しみにお釣りが来る感じです。


ラヴェルの「ボレロ」をレコードで鑑賞中。iTunes のライブラリーをそのままネットワーク経由で再生できるように購入したアンプの、まさか「Analog in」をしかもこんなに頻繁に使うとは思ってもいませんでした。

・クラシックを聴き始めた(ひ)を見た実母が、「福岡にいればもっとコンサートに行けるのにねえ」と言いました。確かに開催される演奏会の数で言えば間違ってはいませんが、アクロス福岡で開催されるクラシックのコンサートは、現代の資本経済社会の構造によってチケットが1枚1万円です。おいそれと行けるものではありません。その点、間違いなく福岡よりも長崎の方がいい音楽に触れられる機会が多いと思います。家族で演奏会に出かけると、小さい頃の(K)はそれはそれはよく可愛がってもらいました。プロフェッショナルの音楽家の方々との距離も、間違いなく近いと思います。

・私たちのような消費者サイドではなく、音楽家側の経済事情はよく分からない謎部分が多いです。しかし、演奏会で音楽家側に支払われるギャラのうち、相当の部分が指揮者とソロ奏者に支払われるのだそうです。国外から招いた巨匠であればその割合も増えるでしょう。ということは、ステージ内外の音楽家や関係者にそれなりの収入を得てもらうためには、その分チケット代に上積みされるのはしかたないことです。しかも、チケットが売れ残ると興行側も困りますから、実験的なプログラムではなく手堅いプログラムを組むのが必然となります。しかし中には、そのようなウケの良い演目は気に入らない音楽家もいるそうです。
ということで、このような葛藤は古い時代からずっと続いていたことが「栄光のウィーンフィル」の中でも語られていました。

・アメリカの演奏会では、音楽の流れを後世に伝えるという意図で、プログラムの半分は比較的モダンな作曲家の曲をあえて入れているそうです。(ひ)がフィラデルフィアで観に行ったコンサートでは、前半にメシアンとベルクで、正直に言うと聴くのがとっても苦痛でした。後半のモーツァルト<交響曲第41番>はリラックスして聴けました。長崎の演奏会では、おそらくそのようなことはないと思いますのでご安心ください。

・(ひ)がアメリカにいた頃の思い出話をもう一つ。隣り合った会場でクラシックの演奏会とヒップホップ音楽にのせたサーカスが開催されていて、共通の駐車場から会場に向かう列がきれいに白人と黒人に枝分かれしていった、という体験があります。
 ヨーロッパのオーケストラの中にアジア人奏者を見ることは珍しくなくなってきました。かのウィーン・フィルにも、日本にルーツを持たれる方が複数いらっしゃいます。樫本大進氏(と安永徹氏)は、かのベルリン・フィルでコンサートマスターを務めているのだから歴代横綱クラスです。しかし黒人の奏者を見たのは、アメリカのオーケストラの映像でチェロ奏者が1人いたのと、カラヤン指揮のニューイヤーコンサートで<春の声>を歌ったキャスリン・バトルのみです。ウィーン少年合唱団には複数の黒人の子がいたので、今後オーケストラ奏者で見ることが増えるかもしれません。


【おまけ・雑感】
以後はかなり(ひ)のウンチクが含まれます。テーマはランダムです。思いつけば適宜付け加えます。

・偉そうなことを長く述べている(ひ)ですが、実は高校生の頃に友人に連れられて行ったクラシックのコンサートで爆睡したことがあります。1曲目のバッハ<ブランデンブルク協奏曲第3番>と後半のメイン マーラー<交響曲第1番>はこの友人からCDを借りて予習していたのですが、知らなかった2曲目で熟睡したのです。とても心地のよい深い眠りだったことをよく覚えています。ちなみに西ドイツ(当時)から来日したオーケストラの演奏会でした。

・この経験を教訓として、クラシックの演奏会には事前に予習して行くことを(ひ)は常としています。つまり演目を含むCDを購入して、通勤のバスの中で聴いて覚えます。少し上級編ですが、聴きどころなども自ら設定して演奏会に臨むことで、満足度がかなり上がります。これを繰り返せば、演目の曲だけではなくCDに含まれる他の曲も聴けるので、結果的に自然と知識が積み重なっていきました。

・その結果、旺文社大学受験ラジオ講座のオープニングのメロディは、ブラームスの「大学祝典序曲」の中の「新入生の歌」部分で、つまり適当ではなくそれなりの意図をもって選曲されていることを知りました。それがアキラさんの言う「ソドレミ」なメロディであり、さらにマイク何某の「バラが咲いた」は同曲のパクリであることも知りました。さらに余談ですが、槇原何某のデビュー曲もモーツァルトのパクリでした。

・ブラームスといえば、師シューマンの未亡人クララとの関係が有名ですが、自身では「私は結婚に適した年齢だった時には収入が十分ではなく、収入を十分に得られるようになった時には結婚に適した年齢をとっくに過ぎていた」と語り、実際に生涯未婚でした。晩年に作曲した<ハンガリー舞曲>のオリジナル楽譜はピアノ連弾で書かれており、ご婦人と並んで肩が触れ合いながらの演奏を楽しんでいたそうです。なんと人間的なのでしょう。ワーグナーが亡くなった時に追悼の手紙を送ると、ワーグナー夫人のコジマ<リストの娘でブラームスを贔屓した指揮者の前妻>から「主人があなたのことを音楽仲間と思っていたとは知りませんでした」という返事が来たそうです。なんと傲慢なのでしょう。

・ピアノ連弾で思い出しましたが、NHKで放送された「植木等とのぼせもん」が面白かったので、クレイジー・キャッツの演奏を YouTube で見てみました。すると少ない資料ながら、コントにはクラシックの音楽が随所に組み込まれ、ピアノ2人の演奏技術は相当に高くてソロ奏者級でした。

・その時に横に出てきたキャンディーズの映像で懐かしい歌を聴いてみたら、驚くべきことにランちゃん・スーちゃん・ミキちゃんの3人が3つのパートを歌い分けてきれいにハモっていました。これは西川先生のおっしゃる「1人1人が重い責任を感じながら演奏するアンサンブル」そのものでした。おそらくパフィーのアジア云々以後だと想像しますが、メンバーが46人とか48人とかいても全員で同じメロディをただ歌う「カラオケ式」が標準になってしまった現代とは違って、とても豊かな音楽だったと思います。

・さらに余談になりますが、昨日車のラジオで久しぶりに聞いた<帰ってきたヨッパライ>には、オッフェンバックの<天国と地獄>のメロディーが組み込まれ、お経は次第にビートルズの<A Hard Day's Night>になり、最後はベートーヴェンの<エリーゼのために>になって終わりました。

・偉そうなことを長く述べている(ひ)ですが、実はピアノも弾けなければヘ音記号も読めません。ビオラを弾くためにあまり一般的ではないハ音記号を少々読めるのが少しだけ自慢です。でもしょっちゅう混乱して弾けなくなってしまいます。いきなり初見でうまく弾けるわけがありません。人前で演奏するには準備が必要です。プロフェッショナルの演奏家も、スポーツの選手も、寄席に出演する落語家も、ちなみに(ひ)の本職もそうですが、本番に臨むには相当の準備が必要だと思います。


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Jeunesse String Ensemble of Nagayo
Since 2009 summer

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